iTunesとは違う音楽のライトユーザーを狙う--auの新音楽サービス「LISMO」

永井美智子(編集部)2006年02月10日 21時19分

 KDDIは1月下旬、携帯電話とPCの両方で同じ音楽を楽しめるサービス「au LISTEN MUSIC MOBILE(LISMO)」を開始した。携帯電話に保存した着うたフルをPCでも再生できるほか、ユーザー同士で楽曲をリコメンドしあう機能などを備える。さらに4月には、PCと携帯電話の両方に対応する音楽配信サービスも始める計画だ。

 固定通信と移動体通信を融合させたサービスを展開するという、いわゆる「FMC(Fixed Mobile Convergence)」という概念が注目されるなか、これまでもKDDIは携帯電話とPCのどちらからも利用できるポータルサイト「DUOGATE」を提供してきた。LISMOはこのFMC戦略をさらに推し進めたものといえるだろう。

 KDDIはLISMOにどのような狙いを込めているのか。KDDIメディア本部メディアビジネス部メディアソフトグループリーダー課長補佐の八木達雄氏と、同グループ課長補佐の上月勝博氏に聞いた。

端末の音楽管理ソフトを共通化

 まず、LISMOのサービス内容について確認しておこう。大きな特徴として、以下の4点が挙げられる。

  1. PC用ソフト「au Music Port」を使って音楽CDの楽曲を取り込み、管理できる。また、携帯電話に転送もできる。
  2. 着うたフルをPCに保存できる。携帯電話で撮影した写真や受信したメールのバックアップや、スケジュール帳のデータの同期も可能だ。なお、PCに保存した着うたフルは、携帯電話端末とPCをUSBケーブルで接続している間のみ再生できる。これは、携帯電話の端末情報を楽曲データの暗号鍵として使っているためだ。
  3. 携帯電話に搭載された音楽再生ソフト「au Music Player」で作成したプレイリストをメールに添付して、ユーザー間で交換できる。
  4. 楽曲推薦サービス「うたとも」でユーザーの嗜好に合う曲を紹介する。au Music Playerで楽曲を再生中に、うたともボタンを押すと、再生中の楽曲を聞いた人がほかにどんな曲を聴いているかがわかる。また、ユーザーが自分のプロフィールページを持ち、プレイリストを公開したり、ほかの人のページにコメントを残せるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)的な機能も備える。

 これまでも一部のau端末ではPCで取り込んだ楽曲を端末に転送できる機能があったが、この場合のソフトはすべて端末メーカーが独自に作っていた。今回、KDDIはLISMOのサービスを実現するために、au Music Playerとau Music Portを独自に開発した。また、楽曲の著作権管理(DRM)技術も着うたフルのものをベースにした独自規格を採用した。KDDIでは今後発売するすべての端末をLISMO対応にする考えだ。

LISMOの誕生は「必然」

上月氏(左)と八木氏(右)は着うたの生みの親でもある。LISMOは数人のチームで開発したといい、専任担当者は上月氏ただ1人だ

 LISMOが生まれた経緯はどのようなものだったのだろうか。八木氏によると、LISMOは2003年末ごろ、必然的に生まれたアイデアだったという。

 「東芝のHDD搭載端末『MUSIC-HDD W41T』の商品化を考えていたときに、外部メモリに対応しない端末である以上、データのバックアップをどうするかが問題となった。このとき、PCに保存するというのが自然に出てきた。東芝が独自にソフトを開発するという手もあったが、どうせやるならKDDIが統一したソフトを提供しよう、ということになった」。こうして、PCと携帯電話を連携させるためのソフトウェア開発が始まった。

 一方、ほぼ時を同じくした2004年初頭には、ソニーからKDDIにうたともの企画が持ち込まれた。うたともはソニーがもともとPC向けに開発していたもので、携帯電話でも使えないかという相談があったのだという。「購入履歴でなく、再生履歴をもとにリコメンドするので、よりユーザーの嗜好に沿った結果が出せるのが面白いと思った。ちょうどmixiなどのSNSがはやりだした時期で、CtoCのコミュニケーションにも注目しており、企業が一方的に情報を提供するのではなくユーザー同士で推薦しあうのがいいと考えた」(八木氏)

 ただし、ユーザーが直接コミュニケーションを取るとなると、トラブルも生まれやすくなる。そこでKDDIでは、ユーザーが書いた楽曲のレビューや掲示板のコメントはすべて目視で確認し、チェックを通ったものだけを公開しているという。また、SNS的な機能はユーザーのプロフィールページのアクセス履歴がみられる「あしあと」機能や、気に入ったユーザーを「お気に入り」に登録する機能など「最低限のものはつけている」(八木氏)という程度で、自分の友人を紹介したり、ユーザー間で直接メッセージをやりとりしたりする機能は設けていない。

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