レコードレーベル各社は膨大な金額を宣伝活動に費やしているが、音楽業界におけるマーケティングの未来を決めるのはRobert Burkeのような人々かもしれない。
Burkeはサウスカロライナ州在住のソフトウェアテスターで、人気の高い「Scopecreep.com」というウェブサイトを運営している。ここでは、「1989年のベストアルバム」から「回文構造の曲集」まで、数千種類のデジタル音楽プレイリストが公開されている。Yahooや、RealNetworksの「Rhapsody」などの音楽サービス加入者なら、だれでもこれらのプレイリストを利用できる。
ある意味で、これは昔いろいろな曲をカセットテープにダビングして、友人に渡していたのとほとんど変わらない。だが、オンライン楽曲販売業者らが数百万曲を網羅したカタログをつかってリスナーを集めようとするなかで、その現代版であるプレイリストに再び注目が集まっている。特に各種のサブスクリプションサービスでは、Burkeのような人物をApple Computerの人気の高いiTunesと戦うための重要な味方として考えている。
Yahooは先週、プレイリスト公開サイト「Webjay」の生みの親を雇用したと発表した。Yahooは、オンライン音楽業界の大勢を占めることになる動きに加わろうとしている。先ごろ公表されたハーバード大学とGartner Groupの共同調査の結果によると、2010年までにオンラインでの楽曲販売の25%は消費者同士の推薦がきっかけとしたものになるという。
Burkeは自分のサイトの魅力について、「われわれは、従来のメディアと口コミの中間の役割を演じている」と説明している。「われわれのサイトは、両方の『いいとこ取り』をした仲介者だ」(Burke)
現在のところ、Burkeや、Yahooが新たに獲得したWebjayなどのサービスに代表されるプレイリストの交換ブームは、デジタル音楽戦争を戦う有効な武器というより、むしろ草の根的なブームのレベルにある。しかし、野心的な音楽サブスクリプションサービス各社は、今後は楽曲共有ツールが重要な役割を果たすようになると見ている。
サブスクリプションサービスの重要な特徴の1つは、ユーザーが無制限に曲を聴ける点だ。自分が推薦する曲の情報を交換し合うユーザー全員が利用料金を払い続ける限り、彼らは追加料金を支払うことなく、合法的に数千種類の曲を聴いたり、数十種類ものプレイリストを交換することができる。
RealNetworkのEvan Krasts(Rhapsodyサービス製品管理ディレクター)は、「これを利用しているのは、積極的で関心の高い人たちだ。これを理解している人は優良な顧客になっていくだろう」と語っている。
iTunesにもプレイリストを公開する人々が数多く集まっている。実際、iTunesにある「iMix」というセクションでは個人が提供した33万種類以上のプレイリストが公開されており、ネット最大級の楽曲推薦スペースとなっている。
しかし、サブスクリプションサービス各社の幹部らによると、iTunesでは1曲が99セントで販売されているため、10曲ダウンロードすると約10ドルにもなることから、実際に聴くことのできる曲数は限られてくるという。
このような主張があっても、サブスクリプションサービスに大量の人が流れる動きはまだ見えていない。iPodの驚異的な成功の波に乗って、AppleのiTunesは今もデジタル音楽業界で圧倒的なシェアを維持している。Appleの幹部らによると、楽曲はサブスクリプションサービスで「レンタル」するのではなく手元に置いておきたい、というのが消費者の考え方だという。
アナリストらによると、もっと多くの時間をかけて合法楽曲ファイル交換サービスを一般に説明しない限り、サブスクリプションサービスが大量のユーザーを獲得することはできないという。
Jupiter ResearchのアナリストDavid Cardは、「(プレイリストは)多くのユーザーがいずれは使う重要な機能になると思う。しかし、それには必死で宣伝することが必要となる」と語っている。
確かに、iPodの売上と、差し迫るCD最後の日を大きく伝える見出し記事がこれだけ多く踊っている。だが、大半の人はデジタル音楽サービスをよく知らない、という事実は忘れられがちだ。
Jupiter Researchが先ごろ行った調査によると、2005年にプレイリストを使って曲を聴いたことがある成人ネットユーザーの割合は、全体のわずか16%だったという(なお、2004年には9%しかいなかった)。18〜24才のユーザーでプレイリストを使って曲を聴いたことがある人間の割合は、2004年が19%だったのに対し、2005年は43%だった。
Jupiterの調査によると、2005年にプレイリストを実際に共有したことがあるネット利用者は、成人のわずか2%、18〜24才でも9%だったという。
大半の消費者は今のところ、料金、ウイルスに対する安全性、公開曲数の方に関心があるとCardは述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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