上場廃止は2月10日前後がポイント
東京証券取引所は1月23日の午後11時過ぎという異例の時間帯に記者会見を行い、ライブドア社長堀江貴文容疑者の逮捕を受けて、同社株とライブドアマーケティング株を同日付で監理ポストに割り当てると発表した。理由については、逮捕容疑となった「偽計取引」や「風説の流布」が市場に与えた影響を勘案したとしている。
ことここに到っての市場参加者の関心は、「果たしてライブドアは上場廃止となるのか」の一点に集まってきた。監理ポストは、まさに“監理”して上場廃止にすべきかどうか様子を見るための猶予の場所。市場関係者は「1つのポイントは、ライブドア本体の粉飾決算容疑が捜査で固めることができるかどうか。本体の粉飾決算容疑で社長が逮捕されると、上場廃止の可能性が非常に高まってくる。堀江容疑者の拘留期限が切れ、起訴される2月10日前後が、東証が決断を下すひとつのポイントとなりそうだ」としている。
ただ、ライブドアの場合、この上場廃止と今後の株価推移は別問題として考えなければならない面もある。通常、上場廃止の可能性が高い銘柄は、多少の時間の差はあっても株価1円に向けて下落トレンドをたどるものだ。ところがライブドアの場合、すでに株価が137円(1月25日現在、)に下落しており、2005年9月期決算末の1株あたり純資産は184円(粉飾でなければ)となっており、すでに株価水準は1株あたり純資産割れとなっている。
そこで浮上するのが「外資を含む他社によるライブドアのM&A説」だ。市場の一部では「このM&Aを見越して、1月25日にでも売り買いが完全合致で寄りつけば、そこから株価は急反発(実際の株価の動きは、神のみぞ知るで、まったく分からないので安易な投資は絶対に手控えるべき)するかも」とのうがった見方も出ているほどだ。また、ネットディーラーの中には“堀江信者”がまだまだ数多く存在していることも事実。ただ、そこから先はまったくのマネーゲームと化し、極端にリスクが高くなることは言うまでも無い。
想定外ではなかった強制捜査
「久しぶりに血の気の引くような下げを体感させられた」とベテランの株式市場関係者にいわしめた今回の「ライブドアショック」。ここでは、連日テレビ、新聞など大手マスコミの報道だけでは理解できない事件の真相と背景、それに今後の展開について大胆に予測してみた。
まず、1月16日夕刻からのライブドアへの東京地検特捜部と証券取引等監視委員会による強制捜査について、一般には「堀江貴文前社長も事前にまったく知らなかったようだ」と報じられているが、一部市場関係者の間では2005年12月下旬ころから「ライブドアに捜査当局の手が伸びるらしい」との噂が流れていた。年明け以降には株式関連の掲示板にもライブドアを巡る噂が書き込まれはじめた。これは株価にも表れていて、2005年末から2006年年明けにかけて全体相場が急上昇しているなかで、ライブドアの株価は800円乗せ寸前の株価水準から700円台割れまでじり安状態となっていた。
政界筋からの圧力で、耐震強度偽装事件関連のヒューザー・小嶋進社長の国会での証人喚問にライブドアの家宅捜索をぶつけて、国民の関心をこちらに引き付けようとしたといううがった見方は別にしても、堀江前社長にとってまったくの“想定外”だったとは考えにくい。
特捜のフェイントにマスコミ大混乱
次ぎに指摘しておきたいのは、強制捜査のタイミングとマスコミ報道の初動段階での混乱ぶりだ。強制捜査の第一報を伝えたのは1月16日午後4時過ぎのNHKテレビニュースで、いったんは「ライブドアに捜索に入った」と報じたものの、実質的な本社であるあの「六本木ヒルズ」にはいつまでたっても捜査官は現れず、ライブドア側も一時は「地検特捜部の強制捜査は受けていない」と否定コメントを出す始末だった。
NHKは、地検特捜部が家宅捜索に“向かった”事実をつかんだため「捜索に入った」と報じた。ところがNHKも、いつまでたっても捜査官が現れず不安になったのか、午後5時のニュースでは「強制捜査に乗り出した」と報道がややトーンダウンした。その間も、ほかの民放テレビは一切事実確認ができないまま、「六本木ヒルズ」に捜査官がようやく到着したのが午後6時30分過ぎだった。
東京地検のある霞ヶ関と六本木は地下鉄なら2駅、車でかなり混んでも15分もあれば十分の距離だ。NHKが4時過ぎの出発を確認した捜査班が到着するまで1時間半近くもかかったのか。いやそうではない。4時過ぎに出発した“先発隊”はライブドアの心臓部ともいえるサーバがある新宿・歌舞伎町のデータセンターに向かい、まったくマスコミのいないなか、午後5時過ぎからデータの押収を進めていたのだ。検察が事前にリークしたかは定かではないが、NHKの報道によってほとんどのマスコミ、そしてライブドアの経営陣までも目を「六本木ヒルズ」に引き付けられてしいまい。証拠隠蔽(いんぺい)の余裕を与えずに1時間も早くサーバの強制捜査に着手することに成功したわけだ。
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