オンラインの音楽配信市場に対するApple Computerの支配力が増すなかで、Microsoftは今年中にも自社のオンライン音楽販売ビジネスにサブスクリプションサービスを追加し、このビジネスをてこ入れしていくと、この計画に詳しい情報筋が明らかにした。
同社は昨年9月、AppleのiTunesに似た楽曲ダウンロードサイトを立ち上げた。MSNブランドの同サービスは、開始時にはサブスクリプションサービスを提供せず、個々の楽曲をウェブサイトもしくはWindows Media Player経由で販売するだけだった。
しかし、一連の交渉に詳しい情報筋によると、Microsoftはサブスクリプションサービスの立ち上げを目指し、レコードレーベル各社や著作権保有者と協力を進めているという。同社は今週はじめ、プロジェクトの進展に関する最新情報を伝えるイベントをニューヨークで開催したと、この情報筋は述べている。
まだ開発途中の新サービスでは、高度なコミュニティ機能やプレイリスト共有機能などが提供されることになっている。しかし、複数の情報筋によると、MicrosoftはAppleに対して、さらに直接的な攻撃を仕掛けることも検討しているという。すなわち、同社はこのサブスクリプションサービスのユーザーに対し、彼らがiTunes Music Storeで購入した楽曲をWindows Mediaフォーマットでも提供して、iPod以外のハードウェアでもその曲が聴けるようにするための権利を著作権保有者から得ようとしているというのだ。
Microsoftはこのサービスに関するコメントを差し控えた。
MSNのプロダクトマネジャー、Christine Andrewsは、「われわれは、サブスクリプションモデルに高い関心を寄せている。これについては今後も検討を続けるが、現時点で具体的に発表できることはない」と語った。
この新サービスが、Microsoftがデジタル音楽ビジネスで作り出したデリケートなバランスを複雑化してしまう可能性がある。同社は、YahooやNapsterなどの企業に重要な技術を提供すると同時に、彼らと競合することにもなるからだ。
アナリストによると、Microsoftが関係を複雑化することをいとわないのは、デジタルメディアがそれだけ重要なビジネスになったことを示すものだという。Microsoftをはじめとする各社は、デジタルエンターテイメントや情報家電が将来ますます重要になると考えている。ただし、この分野でで大きくリードしているのは、iPodとiTunes Music Storeを擁するAppleだ。
今週サンフランシスコで開催中の開発者向けカンファレンスで、Apple CEOのSteve Jobsは、iTunes Music Storeがこの5月に、Microsoft、Yahoo、ソニー、RealNetworksなどの各社を相手に、デジタル音楽ダウンロード市場で82%のシェアを獲得したと発表している。
「Microsoftにとって一番重要なのは、PCを家庭用エンターテインメント機器として、できるだけたくさん使わせることで、そのためには簡単に手に入るコンテンツをたくさん揃えるという方法もある」と市場調査会社Directions on Microsoftのアナリスト、Matt Rosoffは言う。「彼らが心配しているのは、パートナー企業の提供するサービスがひとつも成功せず、Appleがこの市場のプラットホームを握り続けることだ」(Rosoff)
Microsoftの計画に詳しい人々の話によると、このサブスクリプションサービスは、標準的なWindows Media Playerとは別に、ダウンロード可能なソフトウェアの一部として開発されているという。これまであらゆるマルチメディアコンテンツを同プレイヤーソフトウェアに詰め込んできた同社にとって、これは大きな変化といえる。
先ごろ開始された「Yahoo Unlimited」と同様に、Microsoftの新サービスでも、プレイリスト共有機能が内蔵され、会員同士がファイル交換の雰囲気を味わえるようになるという。
同社はまた、サービス立ち上げ当初にプロモーション目的で大胆な価格設定を行う模様だ。具体的には、先にスタートしたYahoo Unlimitedの月額6ドル99セントに対抗できる価格になりそうだと情報筋は述べている。RealNetworksやNapsterにとって、これは有り難くないニュースとなるだろう。両社のサブスクリプションサービスでは、携帯音楽プレイヤーなどに楽曲を転送可能なコースの場合、月々15ドル近い料金がかかるからだ。
iTunesで買った曲の代わりとなるファイルをダウンロードできる機能は、iRiverやCreative Technologiesなど、Windows互換のMP3プレイヤーを販売するメーカーの売上を押し上げることをねらったものになる。Appleでは同社のDRM技術「 FairPlay」を他社にライセンスしていないことから、 iTunesで購入した楽曲をそのまま再生できる音楽プレイヤーは iPodしかない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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