「緊急通信システムにIP技術の導入を」:米ハリケーン被害の教訓

文:Marguerite Reardon(CNET News.com)
翻訳校正:河部恭紀(編集部)
2006年01月16日 22時22分

 2005年、米国南東の沿岸部を襲ったハリケーンは、米国内の緊急通信システムがいかに脆弱で、時代遅れであるかを浮き彫りにした。

 911(警察/消防用緊急電話番号)ネットワークを構築/保守している専門家の一部は、緊急システムにIP技術を導入することにより、システムの耐久性と信頼性が向上すると考えている。しかし、あくまでその費用を負担してくれる人がいればの話だ。

 非営利団体NENA(National Emergency Number Association)の作業問題担当ディレクター、Rick Jonesは、「2005年の自然災害では、多くの機械や装置が故障した」と述べた上で、「(2005年の災害は)米国の緊急通信システムに十分な多様性が欠如している事実を国全体が認識するきっかけとなった」と語った。

 ハリケーン「カトリーナ」の被害を受けたメキシコ湾岸のいくつかの地域では、嵐が猛威を振るっている間、また通過した後も、通常の電話サービスは機能していなかった。さらに、多くの携帯電話ネットワークも通話をサポートできない状態だった。数千人の人々にとって、唯一の通信手段はテキストメッセージングだった。しかし、テキストメッセージングは警察や消防への緊急連絡には使えなかった。現在の911ネットワークに使用されている技術は30年前のもので、音声通話しか認識できないためだ。

 一部の住民は通常の電話ネットワークの使用が可能だったが、彼らからの電話も911のオペレーターにはつながらなかった。ミシシッピー州では、およそ30カ所に設置されたPSAP(public safety answering point)と呼ばれる緊急通報受付所が数日間使用不能となり、数千人の住民が緊急電話をかけられない状態に陥った。

 Jonesらは、IP技術を基礎とした、より動的な緊急通信システムを導入することにより、これらの問題のいくつかは緩和されると考えている。IPネットワークの導入により、テキストメッセージングによる911番通報が可能になるだけではない。大規模な災害に襲われてPSAP自体が被害にあった場合や作業員らが避難せざるをえない場合、緊急時の調整役が非常事態計画を作成し、かかってきた緊急電話を別の地域のPSAPに転送することが可能になる。それにより、途切れることなく電話に対応できる体制を整えることができる、というのがJonesの考えだ。

 大規模なサーバファームを所有するハイテク企業では、これと同様のプランが一般に採用されている。これらの企業では、複数のサーバファームが異なるエリアに設置されており、仮に自然災害によってあるファームが使用不能になっても別のファームが稼動し続けるため、顧客サービスが滞ることはない。

 またIP技術の導入により、PSAPは、同じ地域にある別のPSAPや地元の警察や消防と情報資源を共有できるため、緊急コールセンターの運営費が削減できる、とJonesは指摘する。

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