タグは企業内でも利用され始めている。では、タグそのものを事業計画の基盤に据えることはできるのだろうか。Technoratiの主任エンジニアであるKevin Marksは、すぐには実現しないとした上で、「これは製品というより、むしろ機能であり、考え方だ」と付け加えた。
いずれにせよ、タグが大量の情報を管理するための新しい方法を企業に提供することは間違いなさそうだ。
「ウェブ全体と比べると、企業内では議論のテーマも、語彙も限られている」と、Harvard Berkman Centerのフェロー、Dave Weinbergerはいう。「たとえば、プラスチックメーカーの社内で『成形』という言葉が使われた場合、それは射出成形に関する情報である確率が高い。このように、ウェブ全体を対象とする検索と比べて、企業内の検索ではより正確な推測が可能になる」(Weinberger)
Technorati CEOのSifryは、ある自動車会社の例を引き合いに出す。この企業はドイツにある事業部と米国にある部門とを統合しようとしていたが、その際情報共有に問題が生じる可能性があった。そこでタグシステムを導入し、従業員が書類にさまざまなタグを付けられるようにしたところ、ドイツ語の書類と英語の書類の統合に手を付けることが可能になった。タグを使わなければ、これは永久に不可能だったかもしれないとSifryはいう。
「タグを利用すれば、2つの異なるシステムを結びつけることができる」(Sifry)
「folksonomy」という言葉の生みの親として知られる情報アーキテクトのThomas Vander Walは、美術館の所蔵品にタグを付けるプロジェクトを例に挙げる。このプロジェクトは、ある美術館のコンソーシアムが検討しているもので、来館者が作品にタグを付けられるようにすることで、ある作品に興味を持った人が、他の来館者が付けたタグを見て、その作品を多面的に理解できるようにすることを目指している。
「これは、簡単に言うと、大衆--つまり一般市民が、芸術作品をどのような言葉で表すのを明らかにしようとする試みだ」(Vander Wal)
タグを支えている思想は、オンラインの世界を超えて、物理的な世界にも影響を及ぼしつつある。
「エクスペリエンスマーケティング」を提供する4orty2wo EntertainmentのJane McGonigalは先に、「Ministry of Reshelving」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げた。これはGeorge Orwellの古典『1984』の分類を見直そうというプロジェクトだ。
このプロジェクトでは、全米各地のボランティアに、地元の書店に行って、『1984』を従来の「フィクション」や「文学」といった棚から、新しい棚に移すよう指示が出された。McGonigalは、移動先の棚の案として「時事」「政治」「歴史」「犯罪」、さらには「ノンフィクション新作」などを提案した。
どの棚に移すにせよ、ボランティアたちは移動した本に、棚を移した理由と、Ministry of Reshelvingが「フィクション作品とノンフィクション作品の正しい分類を推進」する団体であることを説明したチラシを挟むよう指示された。
「われわれはこれを『folksonomy mobs(フォークソノミーのモブ)』と呼んでいる。これは公共の場で群衆がタグを付け替える、つまり再分類を行う行為だからだ」とMcGonigalはいう。
McGonigalはタグを利用したオンラインサービスの愛用者でもある。同氏によると、Flickrではタグを付けることが、その写真に関心があることを伝える手段になっているという。
「Flickrユーザーの写真にタグを付けるのは、その写真に好意を持っていることを示すためだ」とMcGonigalはいう。「抱きしめる代わり、といってもいいかもしれない」(McGoniga)
(次回は「マッシュアップ--仮想空間と現実をつなぐ地図」をお届けします)
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