一方、大企業が参入することによって、タグシステムの価値が失われたり、薄れたりする可能性を指摘する人もいる。
YahooはFlickrを買収した直後に、すべての登録ユーザーに対して、翌年中にYahooアカウントを取得するよう求める通達を出した。しかし、あるユーザーグループがこれに反発した。このグループが最も懸念していたのは、Yahooがユーザーの登録情報を広告主に売ることだった。Yahooのその他のサービスでは、こうしたことがしばしば行われている。
「Yahooは傘下のあらゆるサービスを使って、ユーザーベースを拡大しようとしている」と、この反対運動を率いるVille Oksanenは言う。「ユーザーの機嫌を損ねたくなければ、YahooはFlickrユーザーをFlickrユーザーのままにしておくべきだ」(Oksanen)
タグコミュニティではこうした反応は珍しくない。タグコミュニティのメンバーは、自分たちが利用しているシステムを頑なに守ろうとする傾向がある。タグは公開情報に大きな付加価値を加えるため、これを多くのユーザーが自発的に作成しようとする数少ないメタデータのひとつと見る人も多い。
「ユーザーは自分の利益のためにタグを利用している。しかし、それがひとりではなく、大勢のユーザーによって行われることで、大きな価値が生まれる」と、「Smart Mobs」の著者Howard Rheingoldは述べている。
Butterfieldによると、Flickrに保存されている画像の 3分の2以上に、登録ユーザーがタグ付けしているため、特定の画像を探している人は、膨大な画像のなかから目的の画像をすばやく見つけることができるという。たとえば、ネバダ州のピラミッド湖の写真を探している人が、Flickrのデータベースを検索すると、そのなかに「ピラミッド湖」というタグの付いた画像が80枚存在することが簡単にわかるようになっている。
Flickrは、タグシステムの典型的な成功例として引き合いに出されることが多い。Yahooに買収されたことも、Flickrの成功を印象づける大きな要因となっている。しかし、タグはFlickrだけでなく、その他の多くのサイトやブログ、サービスでも利用されている。ユーザーが作成するタグが大きな役割を果たしているサイトとしては、ソーシャルブックマークサービスの「Delicious」、コミュニティブログの「MetaFilter」、ブログ検索の「Technorati」などがある。
オンライン百科事典の「Wikipedia」は、folksonomyを「自由に選ばれたキーワードを使って、協調的に分類を行う行為を指す新語」と定義している。
「Daily Kosでは、毎日400本から600本の日記が更新される。とにかく情報量が多いので、整理してほしいという要望が強かった」と、政治系ブログDaily KosのMarkos Moulitsasはいう。「サイトに掲載されている膨大な情報をどう分類するか--これは深刻な問題だ。何しろ、何百万ワードも分量があるのだから」 (Moulitsas)
11月初旬、Moulitsasはタグを導入することで、この問題に対処した。「カテゴリ方式の場合、ユーザーは自分の記事を予め用意された少数のカテゴリに押し込めなければならない。それに対して、タグ方式なら自分の記事だけでなく、他のユーザーの記事も分類することができる。しかも、利用できるキーワードは無限大だ」(Moulitsas)
ブログ検索サイトのTechnoratiは、タグを次のレベルに進化させようとしている。CEOのDavid Sifryによれば、同社は昨年1月にユーザーがブログの個々の記事にタグを付けられるようにしており、その後ブログそのものにもタグを付けられるようにしたところ、特定のブログの内容を以前よりも正確に推測できるようになったという。あるサイトに対して、複数のユーザーが複数のタグを付けている場合はなおさらだ。
たとえば、「ナノテクノロジー」というタグの付いたブログには、「バイオテクノロジー」、「バイオインフォマティクス」といったタグも付くかもしれない。「サイバー法」というタグの付いたブログには、「独占禁止法」というタグも付くかもしれない。タグを利用すれば、サイトに対するイメージを具体的にふくらませることができる。
「タグを使えば、あるテーマについて、各コミュニティでどんな議論が行われているのかをすぐに把握することができる」(Sifry)
これは「The Search」の著者John Battelleが、「タグシステムはいずれ、既存の検索エンジンに取り込まれる」と考えている理由のひとつでもある。「大手検索サービスは、検索結果を改善する技術をどん欲に飲み込んでいくだろう」とBattelleは指摘する。「これはYahooがFlickrを買収した多くの理由のひとつであり、人々がDeliciousやTechnoratiに投資をしている数少ない理由のひとつでもある。この結果、検索の精度はさらに高まるだろう」(Battelle)
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