--2004年3月にスクウェア・エニックスの100%子会社となっています。日本企業の傘下に入ることを選んだ理由は何かあったのでしょうか。
日本企業というのは、たまたまなんです。うちは早い段階でベンチャーキャピタルから投資を受けていましたから、どこに株式を売るかという話は必ず出るわけです。ソフトウェアの技術だからといって、Microsoftに買収されるわけでないところが面白いですね。いろいろな縁があってスクウェア・エニックスに決まりました。
--買収に関して、どのようなアプローチがあったのですか。
以前から、UIEngineを使ってファイナルファンタジーのゲームを作りませんか、というようなアプローチをしていました。また、当時は資金集めをしていたので、最初は投資の話だったんです。しかし結局は100%の子会社になりました。
UIEngineを使うと、いろんなデバイスで同じアプリケーションが動きます。例えばドコモ、ボーダフォン、KDDIなどどの携帯電話会社の端末でも同じゲームが全部動く。PCでもPDAでもゲーム機でもテレビでも動く。僕らはこれを「パーベイシブ(拡散した)アプリケーション」と呼んでいます。
スクウェア・エニックスの和田(洋一)社長も、今後はあらゆるデバイスに対してコンテンツを配信するという方向で事業を進めていきたいということで、うちの会社が持つクロスプラットフォーム技術に価値を感じてくれたんです。ファミリーコンピュータやプレイステーションなど、ひとつの(ゲーム機という)プラットフォームに賭けてゲームを作っていく時代はもう終わったんですよ。そうではなくて、例えば家ではプレステ、外では携帯電話で同じゲームが遊べる。和田社長には、そういう思想に基づくうちの技術、ビジョンに興味があるといわれました。
--日本支社をこの時期に設立する狙いは。
米国の企業は、給料だけでなく、仕事の進め方、ビジネスに対する決定の仕方など、いろんな面でエンジニアをすごく優遇しています。エンジニアの地位がとても高いんです。だから、米国本社では、人を採用するのが非常に大変です。MicrosoftやGoogleなどの大手企業にどうしても優秀な人材は行ってしまう。その点、日本ではものすごく優秀なエンジニアがたくさんいるのに冷遇されている。米国より人材を集めやすいんです。
しかも今はWeb 2.0の時代と言われているように、産業が変化している。僕は実は大学生のときに、「CANDY」というCADソフトをひとりで開発したことがあります。僕は個人の能力が発揮できるというのがものすごく面白かった。でも、いまたったひとりでMicrosoftのOfficeとは戦えない。PCの世界はもう企業がソフトを作る時代に変わってしまったんです。その点、ウェブはまだ、たったひとりの人が面白いことをしたことで世界がものすごく変わる可能性がある。
だからこそエンジニアが冷遇されている日本で、個人の能力を引き出せる会社を作るのが面白いと思っています。
--日本では、米国本社のようにUIEngineをコンテンツ企業に提供するというビジネス展開になりますか。
普通なら米国本社と同じことをするのが日本法人のあり方ですが、日本では、本社が持っている技術を使ってコンテンツを作る会社にしていきたいんです。ただし、コンテンツといってもスクウェア・エニックスが作るようなものではなくて、逆に絶対に作らないようなコンテンツを作っていきます。
それが何かというのは、これから新しくUIEに入ってくる人に発見してもらいたいと思っています。例えばソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のようなものが考えられます。Web 2.0的なエンタテインメントがこれからどんどん出てくるでしょう。
これまでのゲームは、プロデューサーが世界観を作りこんでできたものをユーザーがプレイしていた。しかし、ファイナルファンタジーシリーズはFF11でオンラインゲームになり、少し変わった。プレイしている人がある意味、コンテンツの一部となって世界を作って楽しんでいるんです。
もっとその方向性を突き詰めていくと、参加している人が世界観自体を作るというのもあっていい。mixiはある意味、ユーザーが世界を作っていますよね。
UIEでは、いままでのエンタテインメントの世界を一気にひっくり返すくらいの新しいものを作ってほしいんです。いかにもWeb 2.0の人を集めてきて、君たちの時代だと伝えたい。開発者には好きにやってもらいたいですね。UIEのプロダクトとしての条件は2つ。いろんなデバイスからアクセスできること、ウェブアプリケーションであることだけです。そのツールとしてUIEngineを提供するので有効に使ってほしい。
ある意味でうちはベンチャー企業なんですよね。資本としてはスクウェア・エニックスの100%子会社になりますが、基本的にはおもいっきりベンチャーです。
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