UIEngineが生み出す新しい家電のコンテンツサービス - (page 4)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:加藤さこ
2006年01月05日 18時31分

--親会社にスクウェア・エニックスを選んだ、その魅力は何ですか。

  今は、いろんなものが重なってきている時代です。スクウェア・エニックスのようにコンテンツを作る会社、ドコモのようにネットワークを提供する会社、また、ISPやポータルサイトなどのいろいろなプレイヤーがいて、ある部分で戦いながらも、共存しています。でも、ポータルにしろISPにしろ、長い目で見るとコモディティ化してしまうので、これから集客がキツくなってきます。

 たとえばドコモはiメニューというポータルと課金機能を持っている点に強みがあるわけですが、この状況が長く続くとも思えない。そういったときにブランドを持っていてコンテンツにファンがいるのは、やはり強い。

 米国で顧客であるDisneyもそうですが、スクウェア・エニックスも強いコンテンツを持っていて、ユーザーと密に繋がっているわけです。この魅力はすごいですよ。ファミコンにプレステが勝った理由の1つが、ファイナルファンタジーが移ったためだと言われています。ドコモの900iシリーズにドラゴンクエストとファイナルファンタジーが搭載されたことがきっかけでFOMAに変えた人も多い。最終的にはブランド力なんです。

--スクウェア・エニックスは、他のゲーム会社に比べてネットワークゲームに力を入れていますね。

  会社としてシフトはしています。でも、いきなりこれまでロールプレイングゲーム(RPG)の開発をしていた人がSNSは作れないです。「イノベーションのジレンマ」が起きているんです。中の人間ではできないことがあるから、外の人間がやる。スクウェア・エニックスにとってはその役割を果たすのがUIEなんですよ。

--日本法人はコンテンツの販売で利益を上げていくということですね。最初のサービスはだいたいいつ頃に出る予定ですか。

  できるだけ早く出したいです。人さえ集まればすぐにでも。まずは人材です。Google Baseで人材を募集しています。自分でウェブサイトを運営しているような、尖がった人が集まってきました。彼らには好きにやってもらおうと思います。1月に本格始動といっても、2〜3月にサービスが出てもおかしくない。パッケージゲームは開発期間に2〜3年かかりますが、それはハイリスクハイリターンです。会社が大きいからできることで、ベンチャー企業には許されないことです。数週間というサイクルで商品を出して、ユーザーの反応を見つつ、機能アップしていく。そういう作り方をしたいですね。

--スクウェア・エニックスと共同でサービスを展開する予定は。

  すぐにはないですね。ただ、そのうち出でくると思います。スクウェア・エニックスのブランドを利用したコンテンツを出したり、逆にUIEで作ったものをスクウェア・エニックスのブランドで出したりといったように、将来的にはいろいろな可能性があると思います。

 ただ、まずはスクウェア・エニックスがやらないようなものを手がけていきたい。ゲームをエンタテインメントとして考えると、実はユーザーから見ると時間とお金を使うという点で音楽などのほかのエンタテインメントと変わりありません。まだ今は音楽からゲームまで、業種がセグメント化されていますが、UIEngineがあれば、今までのようにモバイルゲーム専門の会社、ゲームコンソール専門の会社という分け方はなくなってきます。同じように音楽とゲームの境界線もあいまいになってくる。

 エンタテインメントという点では、SNSも同じです。どんどん境界がなくなっていっていくと思うんですよ。そういうところをやりたいですね。テレビを見る、音楽を聴くというのと同じ次元でネットワークを使ったゲームを楽しめるようになれば良い。だから、今までのようにゲーム機というハードウェアに特化した開発からはちょっと離れた人材が必要なんです。

 UIEは優秀な人たちの遊び場にしたいですね。これまで、ウェブエンジニアが急に組み込みデバイス用のソフトウェアを作ることができなかった。なぜなら、組み込み用ソフトを作るにはiTronなどの組み込み用OSを理解する必要があったからです。でも、UIEngineがあればどのマシンでも同じアプリケーションが動きますから、たとえばPerlが書ければ、セットトップボックス(STB)用のオンラインコンテンツがすぐに作れるわけです。これはすごいチャレンジですよね。iTronとの処理などはエンジンに任せてしまって、ネットワークでつながっているからこその面白いコンテンツ作りに打ち込める。しかも開発環境はPCでよくて、ここで動いたものは組み込み機器でも動いてしまう。

--つまり、ハードがどんなものであっても同じアプリケーションが動くことで、これまでの制作の仕方とはかなり違う形が望めるわけですね。

  そうですね。実は、UIEngineはオン・デマンド・ティービーのSTBに採用されています。この開発のときに、テスト用のマシンがなかなか来なかったんです。でもUIEngineはハードが何であっても動いてしまうので、先にPCのエミュレーターを使ってソフトを作ってしまいました。届いたテスト用マシンにUIEngineを搭載したところ、2週間で動くものができた。これは今までではありえないことです。

--米国ではUIEngineの開発と提供、日本ではコンテンツ展開を中心にしていくということですね。全体としてUIEvolutionのビジネスを考えた場合、今後はUIEngineの提供とコンテンツの展開のどちらがメインになりますか。

  長い目で見たら、ソフトのライセンスで利益を上げるビジネスモデルが、はたして正しいのかという疑問があります。デバイスの値段がどんどん下がっている時代です。例えば、ちょっと究極的な話になりますが、非接触ICチップとディスプレイを搭載した乗車カードにUIEngineが組み込まれたとします。そこに1枚あたり数百円のライセンス料は取れない。1〜2円のレベルの話になってしまいます。

 しかし例えば、そのカードで改札を通れば、電車に乗っている間にゲームが楽しめるというサービスがあって、そこにうちがコンテンツを提供したとします。そのゲームは1回10円かかって、そのうちの数%をうちがもらうとする。そのほうが、ビジネスとしてはずっと面白いですよ。理想は、UIEngineは水のようにいろんな端末に自由に搭載されて、そこで、自社のコンテンツが流れていく。うちはコンテンツのビジネスでやっていきたいです。

--UIEngineによってどんな端末からでも同じコンテンツが利用できる、いわばユビキタスな環境をつくって、そこに向けてコンテンツを提供するというわけですね。

 (PCや携帯電話などが普及して)デバイスはすでにユビキタスになってきていますが、まだコンテンツがユビキタスではないんです。だから、コンテンツをユビキタスにしましょうという話なんですよ。

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