大手映画会社各社が新しい高品位DVDの準備を進めるなか、少なくとも1社は新ディスクフォーマットの最も先進的な部分の採用を見送り、代わって10年以上前から存在する技術を使おうとしている。
ハイテク業界の大手各社のなかには、このことに失望するところがあるかもしれない。ほかの映画会社がこの動きに追随すればなおさらだ。MicrosoftやApple Computerなどの各社は、先進的なビデオソフトウェアフォーマット(「コーデック」)に関する自社の取り組みが、製品の売上に貢献すると期待してきたからだ。
これは、Blu-ray対HD DVDの標準争いのなかで、あまり知られていないが興味深い部分といえる。ソニーらが支持するBlu-rayと東芝などが支持するHD DVDは、次世代DVDの標準化をめぐって1年以上前から争いを続けてきている。
ビデオのコーデック(「コーダ--デコーダ」の略)が重要なのは、所定のデジタルストレージ容量や、DSLやケーブルテレビ回線経由の転送に合わせて圧縮可能なビデオの画質がこれによって決まるからだ。またコーデックはDVDにとって絶対不可欠な部分だ。
Microsoftは2年前、次世代DVDへの採用を目指して「VC-1」と呼ばれるWindowsビデオ技術を標準化団体に提出し、多くを驚かせた。それに対して、他のIT関連の大手各社は、「MPEG-4 AVC」という競合する先進フォーマットの特許使用権を保有している。
ところが、ソニー・ピクチャーズは先週、上記のいずれでもない選択肢を採用する意向を明らかにした。同社の幹部らはCNET News.comとのインタビューのなかで、ソニーのBlu-ray Discを使ってリリースされるタイトルには、新しいコーデックがすぐに必要なわけではないとし、代わりに11年前に開発され、今日のDVDで使われている「MPEG-2」を採用することを明らかにした。
ソニー・ピクチャーズのDon Eklund(先端技術担当シニアバイスプレジデント)は、「先進(フォーマット)だからといって必ずしも画質が向上するわけではない。Blu-rayにとって最高の画質を実現することがわれわれの目標だ。現在、そして当面は、MPEG-2が選択肢になる」と語っている。
さまざまな略語が飛び交っているが、平均的な消費者にとってはいずれも大きな違いはないように思える。しかし、新しい動画技術の開発やサポートに多大な投資をしてきた企業各社にとっては、ソニー・ピクチャーズの判断が大きな意味を持つ可能性がある。Microsoftは、自社の先進ビデオフォーマットをハリウッドの映画会社やケーブルネットワーク、衛星テレビ各社に採用させることで、ホームエンターテインメント市場におけるWindows搭載機器のシェア拡大に賭けてきた。
一方、Appleなどの多くのマルチメディア関連各社はAVCの支持を表明している。AVCは、1994年にMPEG-2を策定したMoving Pictures Experts Group(MPEG)によって批准された標準技術だ。
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