ソニーらが推すBlu-ray Discが、次世代DVDの標準争いでリードしているように見えることから、各映画会社やディスク製造業者らは、新フォーマットに関するコスト面の現実や、厄介な不確定要素と折り合いをつける作業を始めている。
Blu-rayを支持するソニーらと、ライバルのHD DVDを支持する東芝などの各社は、1年以上も前から痛烈なPR合戦を繰り広げてきた。どちらのディスクも、高品位(HD)版の映画を収められるほど大容量で、画質面でも今日の技術で可能なレベルを大きく上回る。
ほとんどの大手映画会社がBlu-rayフォーマットのタイトルを来年リリースすると表明しており、現在はBlu-rayのほうが優位に立っているように見える。だが、この新フォーマットのDVDの大量生産に関して、最近新たな懸念が浮上してきた。Blu-rayは過去のDVDやCDの技術とは完全に異なることから、一部の関係者は、Blu-rayをサポートするには--少なくとも短期的には--多くのコストがかかり、それが消費者の手にする製品の価格上昇につながるのではないかという不安を抱いている。
実際にどの程度コストが割高になるかについては、だれにも確かなところはわからない。しかし、ある大手ディスクメーカーの幹部が匿名を条件に明らかにしたところでは、初期のあるテストで一定時間内の歩留まりを比較したところ、HD DVDディスクの製造ラインのほうが、同様のBlu-rayディスク製造ラインより、2倍近くも歩留まりが良かったという。これは、それだけBlu-rayの製造コストが割高になることを意味する。さらにこの幹部は、Blu-rayの材料がまだ入手困難である点を挙げながら、Blu-rayの製造にはHD DVDの2倍近いコストがかかる可能性もあると述べた。
Blue-rayの初期の製造コストが割高になることは、特に驚くべきことではない。こうした新技術は、当初は注文数が少なく、またメーカー側でも製造工程の合理化を学ぶ過程にあるため、通常は割高になる。なお、ソニーはこれらの推定コストが高いことにも異議を唱えている。
Sony PicturesのAdrian Alperovich(新規事業開発担当エグゼクティブ・バイスプレジデント)は、「(コストの)差があるとしても、かならずそうなると決まったわけではない。どちらの陣営にも(複数のメーカーが)付いている。コストに差があっても、違いは最小限に収まると思う」と述べている。
Alperovichは、仮に短期的な価格の差があるとしても、容量で上回り、ゲームのような目的に対応する柔軟性の点でも優れるBlu-rayには、その価格差を補って余りある利点があると主張している。しかし、Blu-rayに従来からある製造に関する疑問によって、この争いには辛辣な空気が漂っている。
Blu-rayと競合するHD DVDのディスクは、十分に完成された工程で製造される。HD DVDの構造は既存のDVDにかなり近く、ベースとなるディスクは既存のDVD製造ラインにわずかな変更を加えるだけで製造できる。
それに対して、Blu-rayのディスクを製造するには、全く別の機器が必要とされる。現在、DVDやCDを製造する主力ディスクメーカーは大半が試作ラインを1〜2ライン準備し、運用を開始しているが、製造コストに関する信頼できるデータはまだほとんどない。
Blu-ray Disc Associationの参加メンバー各社は、これまでに何度も、同ディスクの製造コストが早急に低下し、すぐにHD DVDと競争できるレベルに達するとの予測を示している。
しかし、ある大手ディスク複製業者は、Blu-rayの製造コストについてかなり前から懸念を抱いていると語った。
「Blu-ray陣営から出ている一部の声明では、コンテンツ所有者を取り込もうとするあまり、非現実的なコストと価格を設定しているように思う」とこの幹部は述べている。この幹部の働く企業では、Blu-ray陣営の各社と密接な協力関係にあることを理由に匿名を希望した。「オペレーションに関する知識の点では、彼らはゼロに等しい」(同幹部)
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