ブロードバンド化を鍵に「健全なる拡大」を目指す--キヤノンの新5カ年計画

 5年毎に行われるCanon EXPOが、10月26日から28日まで、東京都内の新高輪プリンスホテルにて開催されている。その初日である26日には、代表取締役社長の御手洗冨士夫氏によるキーノートスピーチが行われた。開催場所の東京国際フォーラムには、5000人を超える参加者が集まった。御手洗氏は10年の歳月をかけて取り組んできた1995年からの経営戦略を振り返り、2006年から始まる新たな5カ年経営戦略「フェーズ?」について、その構想を語った。

グローバル化とブロードバンドの進化こそがチャンス

 1996年に「利益優先」「全体最適」の意識改革から始まった構想は、「グローバル優良企業グループ構想」のフェーズ?へと続き、キヤノンを高収益体質へと変化させる原動力となった。2006年から始まるフェーズ?では、新たな挑戦として「健全なる拡大」をテーマとして掲げている。

 御手洗氏は、フェーズ?を進めていくにあたって、グローバル化、ブロードバンド化の2つの波が、またとない大きなチャンスになると話す。「キヤノンは、製品のデジタル化を一気に果たし、新しい環境を提供してきた。これからはブロードバンドによって高度なデジタル製品同士を縦横に連携させることも可能になる。フェーズ?の新たな企業戦略では、全く新しい豊かなデジタルイメージの世界を切り開いていく」

キヤノン代表取締役社長の御手洗冨士夫氏

 フェーズ?の具体的な戦略のひとつとして、来春発売予定のSED(表面電界ディスプレイ)を搭載した薄型テレビ事業が挙げられた。動画によるコミュニケーションのニーズに対し、キヤノンはこれまで3種類のディスプレイの開発に取り組んできたが、中でもSEDは20年近く独自に開発を進めてきたものだ。具体的には、SEDをリビングルームにおける映像と情報の窓口として、他の機器とワイヤレスで連携させ、ネットワーク上の情報をいつでも呼び出せるようにするという。

 その他に、2008年までには市場規模が1億台に達すると予測されるデジタルカメラや、美しさと速さを両立したフォトプリントの複合機にも力を注ぐ。

 オフィス機器では、ユーザーの用途に合わせたハード環境を簡単に構築し、アプリケーションソフトを組み合わせる「アドバンスIRシステム」を展開する。これにより、それぞれのワークフローに合わせた生産性の高いシステムが提供できるという。具体的には、ネットワーク上のデータベースからどんな機器でも情報を入出力できるだけでなく、保存や検索まで可能なシステムの提供を目指す。

 新たな事業展開としては、Microsoftと次期OSである「Windows Vista」のカラーマネージメントの分野において提携したことが挙げられた。次世代のWebサービス技術に対応した製品の投入や、XML規格の電子文書フォーマットの提供などが相互に行われることになる。

 効率的に事業の拡大するため、フェーズ?では研究開発力の強化を図ることも明らかにした。2004年には2750億円だった開発費を2010年には5000億円にまで引き上げる。

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