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ブロードバンド化を鍵に「健全なる拡大」を目指す--キヤノンの新5カ年計画 - (page 2)

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「グローバルスタンダード」では意味がない

 日米双方で仕事をし、生活をしてきた経験から、経営の本質は合理性の追求だと御手洗氏は語る。ここでいう合理性とは、いわゆる「グローバルスタンダード」ではなく、それぞれの企業が、それぞれの国における自社の実情に照らして最も合理的な方法により経営を行っていくことだ。何が合理的かを具体的に考えていくと、科学戦略などの分野ではどの国も共通だが、組織、人事については文化の特殊性を無視できないことを訴えていた。

 「生産性を上げるには、その国の文化、伝統を踏まえて経営をすることが合理的だ。アメリカ型の経営は、現代のアメリカ社会に最も適した方法。そのまま日本にもってきても、木に竹を接ぐようなものだ。今あるものを無理やり変えようとするのは合理的ではない」

 日本の風土、文化についての例として、伝統ともいえる「終身雇用制度」を例に挙げて説明した。終身雇用というと時代を逆行しているように思われがちだが、日本社会の人材の流動性の低さを考えると多くの合理性があるというのが御手洗氏の見解だ。次のようにアメリカ社会との比較で、終身雇用のメリットを述べた。

 「まずアメリカは典型的な市場経済の国で、人材も流動性の高い社会だ。同じ学校を出て、同じ会社に同じ時期に勤めても、その会社のニーズと個人の能力の違いで初任給が異なることが当たり前。それがフェアと判断される価値観を持った社会である。コンスタントに人材を入れ替えることによって、企業は優良な社員を集めて良い会社を作っていく。これに対して日本は、まだまだ国全体としては非常に流動性が低い。労働に関わるさまざまなインフラも整理されているとはいえない」

 「経営者は今ある社会状況を踏まえて経営をしていくもので、ないものねだり、理想論を前提にして物事を決めるのではない。時代に合致した終身雇用ならば生かすべきだ。長い期間同じ仲間と過ごすため、信頼関係培われ、意思の伝達もスムーズで経営スピードも速くなる。また、自分の人生の成長と企業の発展を重ね合わせて考えることができる。そして、社員を徹底的に教育して強い組織を作り上げていくことも可能となる」

 ただし、どんな制度でも短所はある。終身雇用の欠点として、職務が年功序列で行われた場合、組織は緊張感を失う。御手洗氏は「平等」という社会のしくみではなく、「公平」を求める意識改革が必要だと唱え、そのためには社会基本理念である価値観を変えなければならないと訴える。「今、日本がやらなければいけないことは、長い歴史の中で培ってきた民族の英知を安易に放棄することではなく、文化や風土を新しい時代に合うものにすべく、必要な改良を加えていくこと。これは創業以来、キヤノンが貫いている理念でもある」

 「少子高齢化の労働力不足も、最先端技術を持つ企業が集まっている日本では、ロボットを活用した効率的な生産システムの確立によって解決できる問題だと考えている。日本ならではの先進国型のものづくりは、新たな可能性がある。しかし、これを実現するには、国を挙げての維持発展が必要だ。ひとつの企業の努力で変えられるものではないが、キヤノンは先陣をきって果敢に挑戦していきたい」--最後に御手洗社長はこう締めくくり、スピーチを終了した。

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