グリー、田中社長のSNS式起業の方法 - (page 2)

インタビュー:藤本京子(編集部)
文:林信行
2005年10月20日 19時28分

--では、ユーザーに見える表面的な機能はどのように変わったのでしょう。

 ここ数カ月間で追加した機能をまとめると、まず大事なのは「GREEモバイル」という携帯電話からのアクセス機能です。これは6月より提供していますが、パソコンからのアクセスとほぼ同等の機能を用意していて、携帯電話単体で友人に招待状を送ることもできます。

 日本では、パソコンを持っていない人でも、携帯電話からインターネットを利用する人が多いので、このように携帯電話からすべての機能を利用できるのは重要なことだと思います。もちろん、携帯電話からアクセスした内容は、パソコンで利用する内容と完全に連動しています。

 また9月に始めたフォトアルバム機能も目玉の1つです。いずれはFlickrを超えることを目指していて、タグをつける機能もあれば、FlickrのOrganizrのように写真を整理するための機能、自分のブログに写真を貼り付けて表示できるバッジ機能も用意しています。ほかにも、日記で絵文字が使えるようにしたという細かな改良もあります。こうした機能の追加が一段落して、次はデザイン面を手直しする段階にきました。

 つまり、一番下の階層となる会社としてのインフラ作りから始まって、システムのインフラ作り、そして機能追加と、下の層から徐々に積み上げてゆき、今ようやくエンドユーザーに見える形のアクションが起こせたことになります。

--今回のリニューアルでアルファ版からベータ版になりましたが、正式版となるのはいつ頃を目標としていますか。

 バージョンについては、これまでのアルファ版やベータ版という表現自体がおかしいのではないかと感じています。インターネットのアプリケーションは、公開すれば終わるわけではなく、永久に改良され、進化し続けるものです。そこで、GREEも永久に仕様が完成することがないという意味をこめて、「パーペチュアル(Perpetual、永久につづく)ベータ版」を唱うことにしました。

 ここで重要なのは、機能を押しつけがましく追加しても意味がないということ、また、ユーザーに媚びた作り方をしてもだめだということです。対話を通して、サービスを提供する側とユーザー側のお互いが納得のいくものを作り上げたいと思っています。できあがった機能をユーザーがどのように使っているかを観察し、それを反映した上でサービスを強化するといった対話型のアプローチですね。そういう意味では、我々はオープンソースのインフラEthnaの部分でも対話的だし、サービス的にも対話的だと思っています。

--今後もグリーは、SNSを中心にサービスを展開するのでしょうか。また、競合となる他のSNSとどのように差別化していくのでしょう。

 サービス的に他社と差別化するという発想ではなく、むしろ新しい使い方をどんどん提案していきたいですね。

 今やグリーの競合は、いわゆるSNSと呼ばれるものだけではありません。例えばブログサービスを提供するシックス・アパートにしても、オンライン認証システムのTypeKeyを導入していますし、今後の製品では個別に閲覧制限を設けることが重要だと言い始めています。これはまさにSNSがやってきたことで、両者の壁は次第になくなりつつあると思います。

 大切なのは機能ではなくて、ユーザーに対していかに新しい使い方を提案できるかです。おそらくCGM(Consumer Generated Media、ユーザー自身が情報発信するメディア)と呼ばれるジャンルの中で、GREEは「インターネットのコミュニティ系サービス」を目指すことになると思います。

 ただコミュニティといっても、一昔前のように現実の世界とかけ離れたコミュニティではなく、現実と結びついたリアルなコミュニティとなるでしょう。今、世の中では現実の世界とインターネット上の世界が渾然一体となりつつあります。

 例えば、誰かが旅行に出かけてその情報をインターネットで配信すると、その体験はネットを通して共有されます。その情報を見て、別の人が実際にそこに旅行しようと思うこともあるわけで、まさにバーチャルとリアルの循環のようなものが生まれ始めています。今後は、人間関係をどう捉えていけばよいのか、増え続ける情報量をどのように再加工して提示すればよいのかといったことを真剣に考えていきたいですね。

 しかし、1年後に何を作っているかは正直想像がつきません。変化やブームは突然やって来ますから。ユーザーが望んでいるような変化に、迅速に対応できることが大切です。そのためには体力のある会社であることが重要ですが、グリーはその点で運がよかったと思っています。

--サービスについては理解しました。では、グリーのビジネスモデルはどのような形で発展する予定ですか。

 基本的にユーザーには全機能を無料で提供したいので、広告モデル主導でやっていくつもりです。8月にやっと営業担当者を雇用したのですが、ここでも優秀な人材に恵まれたため、すでにKDDIや民主党、リクルートなど、ナショナルクライアントからの広告出稿も実現しました。ページビューもそれなりにあるので、当面広告だけでやっていけると思っています。

 もっとも、それはSNS事業における話です。インフラ部分が完成したのを受けて、今後はアフィリエイトやコンテンツ連動型広告、RSSマーケティング、さらにはWeb2.0やCGMといった広範なサービスにも目を向けていきたいと思っています。そういう意味では、会社としてあまり今の収益構造にこだわる必要はないのかもしれません。

グリー社内は若い力であふれている

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