IBMの研究開発部門であるIBM Researchは米国時間11日、創設60周年を迎えた。IBM Researchはこれまで、コンピュータサイエンス、物理学、半導体設計の各分野で様々な画期的発明を行ってきたが、現在は組織の運営方法に関する科学的研究を強化している。
IBM Researchは元々、コロンビア大学の改装された男子学生寮内に設立され、当時の名称はWatson Scientific Computing Laboratoryだった。そして今や、世界で最も優れた技術研究センターの1つとなり、このIBM Researchのおかげで、IBMは数多くの分野で競合企業に対し優位に立つことができた。
これまでにIBMの5人の従業員が、電子トンネルの発見や個々の原子の画像を捉える顕微鏡の発明などでノーベル賞を受賞している。さらに同社は、National Medals of Technology(米国技術賞)を7度、National Medals of Science(米国科学賞)を5度、A.M. Turing Awards(AMチューリング賞)を4度それぞれ受賞している。
IBMがこれまでに行った発明/発見の例としては、プログラミング言語のFortran(1957年)、磁気記憶(1955年)、リレーショナルデータベース(1970年)、DRAM(dynamic random access memory)セル(1962年)、RISC(reduced instruction set computer)チップアーキテクチャ(1980年)、フラクタル(1967年)、超伝導(1987年)、Data Encryption Standard(1974年)などが挙げられる。同社は過去12年間に2万9021件の特許を取得した。世界で企業や個人がこれだけ多くの特許を取得した例はない。
またIBMは、有名なBell LabsやXerox PARCとは異なり、高度な製品/サービスの販売や知的財産のライセンシングを通じて研究成果を確実に会社の利益増につなげるよう努力してきた。
IBMの研究担当シニアバイスプレジデント、Paul Hornはインタビューの中で、「われわれは探索的な活動も行うが、研究が特許数の増加の一助となることを期待している」と述べ、さらに「たしかにBell Labsは大金を費やしたが、研究がいかに企業に影響を与えたかについての強力なモデルが全くなかった」と語った。
IBM Researchの実利を重んじる傾向は設立当初までさかのぼる、とHornは付け加えた。同グループは1945年に活動を開始したが、IBMは第二次世界大戦や戦後復興に対する対応策として同グループを設立したわけではなかった。「(IBMの創業者の息子である)Thomas J. Watson Jr.は、将来、コンピュータでしか解決できない多くの難問が発生すると感じた」とHornは語る。
しかしIBM Researchは、IBMが一般のテレビ用モニターをコンピュータ用ディスプレイとして用いる方法を考案した(1968年)、あるいは世界初のコンピュータ向け音声認識アプリケーションを普及させた(1971年)時代である1970年代とは全く性格の異なる場所になりつつある。
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