米連邦政府の監督機関が下した裁定により、ブロードバンドサービスプロバイダおよびインターネット電話サービス事業者は2007年の春までに、警察による通信傍受を容易にする目的で新たに策定された複雑な規則に従う必要がでてきた。
米連邦通信委員会(FCC)は米国時間23日夜に、全59ページからなる決定書を発表した。それによると、公衆電話網を利用しているVoIP(voice over Internet Protocol)サービスプロバイダは、通信傍受が可能な体制を整えなければならない。対象となるVoIPサービス事業者は、Vonage、SkypeOut、Packet 8などだ。
しかし、「捜査当局による通信傍受の援助法(Communications Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)」の規定が、企業、大学、非営利団体、さらに無線などのインターネットアクセスを提供する個人にとってどのような意味を持つのかについては依然として不明確だ。
「インターネットと公衆交換回線網には大変根本的な違いがあるため、FCCは(CALEAの)厳密な対象範囲の決定に大変苦心した」と語るのは、民主主義と技術のためのセンター(Center for Democracy and Technology:CDT)のエグゼクティブディレクター、Jim Dempseyだ。
FCCは、テロや国土安全保障に関する懸念を考慮すると、そのような規則は必要だとし、VoIPサービスはテロリスト、犯罪者、スパイらの「避難所」となっていると警告したBush政権高官らの主張に賛同した。「テロリストや犯罪者らが、ブロードバンドインターネットアクセスサービスを利用することで、捜査当局による合法的な監視を免れているとしたら、このことを許すのは、明らかに公益に反する」(FCC)
FBIは、少なくとも2003年中頃から通信傍受法の成立に向け政府に働きかけてきており、また、政府の監督機関も2004年3月からFBIからの要請を正式に検討してきたが、規則の内容は依然として曖昧なままだ。例えば、FCCは命令書の中で、大学や地方のブロードバンドサービスプロバイダは、現在運営中のネットワークが警察の要求を満たすまで、インターネット接続サービスの提供を中止しなくてはならないのか否かについて、「結論に達していない」としている。
FCCが作成した全59ページに渡る規則は、上りまたは下りの接続速度が200Kbps以上の全ての「インターネットアクセスサービス」に適用される。この基準に従うと、個人または企業が運営するWi-Fiホットスポットも十分に適用対象に含まれることになる。しかし、FCCは命令書の脚注の中で、Wi-Fiサービスを提供しているホテル、コーヒー店、本屋を同規則の適用対象に含める「意図はない」としている。
FCCは、年内のリリースを公約している同規則の第二版の中で、これらの疑問に対する答えを出すものと見られる。また、機器のアップグレードに要するコストを納税者が負担することになるのか否かという疑問に対する回答や、期限に関するさらなる詳細情報も盛り込まれるだろう。(要求事項は、同規則が官報に公示されてから1年半後に発効するが、同規則はまだ公示されていないため、期限は2007年4月頃になる。)
FCCのある関係者が26日に匿名を条件に語ったところによると、「システムの運営者が誰であろうと」通信傍受に関する連邦政府の要求事項に従わなくてはならないという。同氏によると、「実際にネットワークを所有している」人は、(インターネットサービスを購入にしているにすぎないカフェとは対照的に)要求事項の遵守が義務付けられるという。
業界団体のNational Cable & Telecommunications Association(NCTA)およびVoice On the Net Coalitionの広報担当者は、重要問題に対する回答が依然なされていない点は認めつつも、両団体はFCCと連携し、現在運営しているサービスが要求事項を確実に満たすよう努力していくと語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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