米司法省は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)に顧客のオンライン活動記録の保存を義務付けるための妙案を密かに物色している。
データ保存規則が制定されれば、警察は、通常ならISPが数カ月前に消去しているはずのメール、訪問先ウェブサイト、チャットなどの活動記録を入手できるようになる可能性がある。ただ、それにはログが保存されていることが前提となる。米国の現行法は、そのようなログの保存を義務付けていない。
ISPにデータ保存を義務付けることにより、少なくとも理論的には、データが保存されていなければ証拠不十分で不起訴となっていたはずの犯罪者やテロリストの訴追が可能になる。しかし欧州では、プライバシーに関する様々な懸念や、顧客のオンライン活動の巨大なデータベース構築が実用的か否かという疑問が浮上し、今回と同様の法案の立法化に向けた動きが頓挫した。そのため米国内でも、欧州の場合と同じ理由で法案に対する猛反発を招く恐れがある。
欧州のCouncil of Justice and Home Affairs(CJHA)の大臣らは、ログは1〜3年間保存しなくてはならないとしている。一方、米国のある業界関係者が匿名を条件に語ったところによると、司法省は最低2カ月間の保存義務付けを検討しているという。
米国時間4月27日にバージニア州アレクサンドリアのHoliday Inn Select で、司法省は、ISP各社やNational Center for Missing & Exploited Children(全米行方不明・被搾取児童センター:NCMEC)との非公式な会合を開いた。複数の出席者によると、司法省関係者はその会合でISPに一定期間データ保存を義務付ける案を支持したという。
「会合では、(データ保存の義務付けに関する)議題が一度だけでなく、強調するかのように何度も提起された」と語るのは、中小規模のインターネット企業が加盟する業界団体U.S. Internet Industry AssociationのプレジデントDave McClureだ。「司法省の人々はわれわれに対し、『世間から児童ポルノに対して甘いと思われたくなければデータ保持について検討し始める必要がある』と言った」(McClure)
McClureによると、司法省関係者は、ISPが自主的に協力すべきとしながらも、標準的なデータ保存期間を法で定めなければならなくなる可能性も示唆したという。同氏はさらに、「司法省はかなり前からこの問題に取り組んでいるように感じた」と付け加えた。
司法省は長年、データ保存は不要であり、ISPに許容し難い負担を課すものだとの立場を取ってきた。しかし今回の出来事は、同省の突然の方針変更を意味する。Bush政権は2001年に、広範なデータ保存を義務付ける体制について大いなる懸念を表明した。
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