ケーブルテレビのチャンネルは現在、「下品な」コンテンツ取り締まりの対象になっていないものの、一部のチャンネルは道徳家を自称する議員たちの怒りを買わないように放送を自重している。
FX Networks社長John Landgrafは、先週、コロラド州アスペンで開催された会合で、「FX Networkの番組は、格付けされ、Vチップにも対応している。さらに、番組の冒頭には、内容について詳細な警告を出している」と述べた。FXの番組ラインアップには、「Rescue Me」や「It's Always Sunny in Philadelphia」などがある。
「内容を知らずに番組を見てしまうことは絶対にあり得ない。大人向けの番組であることをはっきりと知らせているのだから」とLandgrafは語り、夜の早い時間帯にきわどい番組を流すつもりもないと付け加えた。「法的には規制されているわけでもなく、FCCが我々に罰則を与えることはできないのだが、現在の状況では、こうするより我々に選択肢はないと感じている」(Landgraf)。
ポルノだけの規制ではすまない
議会ではこうしたポルノ規制の動きが活発になっているが、そのようなことをしても効果はないし、アダルトサイトがなくなるわけでもない。
アダルトサイトを、課税や規制や起訴などによって厳重に取り締まることは、大きなニュースにはなっても、あくまで政治的なポーズに過ぎない。露骨な性表現を含むサイトが存在するのは米国に限ったことではない。アムステルダムにあるそうしたサイトを閉じるようにオランダ人を説得するのは、イラク侵攻を支援するようにフランス人を説得するようなもので、到底不可能だ。
それに、ポルノを規制する法律はポルノ産業だけを対象にすることを謳ってはいるが、結局は、少数派の考えを抑えつけるのに悪用されることになる。
こうしたわいせつ規制法の犠牲になった比較的最近の例として、Jack KerouacとWilliam S. Burroughsの文芸評論、Henry Millerの『北回帰線』、古典的ポルノ小説『ファニーヒル』、James Joyceの『ユリシーズ』などがある。10年前まで遡れば、漫画家のMike Dianaの作品などもそうだ。
下品なコンテンツに対する規制はもっと範囲が広い。FCCは、4文字の卑猥な単語を使っただけで罰せられる可能性があるとしている。規制の対象には、ニュース記事、辞書、性教育サイト、果ては副大統領と上院議員の会話記録にまで及ぶ。
AppleのTigerオペレーティングシステムで採用されている「white-listed Web sites(優良サイトリスト)」やVチップなどのテクノロジー、あるいは単純に電源を切るだけでも、ポルノから子供たちを護るのにはるかに効果がある。しかも、表現の自由を侵害することもない。しかし、そうした方法では、政治家たちは自分の功績だと主張できない。つまり、社会的保護主義者たちの怒りを和らげることができないのだ。となると、政治家たちによる同じような規制の動きがこれからも出てくるに違いない。
筆者略歴
Declan McCullagh
CNET News.comのワシントンDC駐在記者。以前は数年間にわたって、Wired Newsでワシントン支局の責任者を務めていた。またThe Netly News.やTimes誌、HotWiredでも記者として働いた経験もある。
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