先週、インターネットにポルノコンテンツを掲載する者に重税を課す新たな法案が米議会に提出された。法学者らはこの法案が、憲法の保障する表現の自由に反するとして、批判の声を上げている。
Blanche Lincoln上院議員(アーカンソー州選出、民主党)は、自身が先週議会に提出した法案について、インターネットを子供たちにとって「より安全な場所」にするための手段であると説明した。同法案が成立すれば、大半のアダルトサイトの売上に25%の税金が課されることになる。
Lincolnは、「インターネット上に存在する多くのアダルトサイトは、子供たちにとって閲覧しにくい状態になっていない。それどころか、むしろ、子供たちの目に入りやすい場所にコンテンツを掲載している」とし、さらに「今こそわれわれが立ち上がり、『もう、たくさんだ』と声を上げる時だ」と付け加えた。
しかし、合衆国憲法修正第一条に詳しい法学者によると、過去に同様の課税に対し裁判所から違憲判決が下されており、仮に今回Lincolnの法案が成立しても、その後の裁判で違憲判決が下される可能性が高いという。
アメリカン大学憲法学教授のJamin Raskinは、「一般原則として、ある特定の種類の表現を禁止できない場合は、その表現に対し重点的に課税することはできない」とし、さらに「よって、(Lincoln)上院議員が標的にしている言論が修正第一条で保護されている場合は、それに対し重点的に課税されることはないだろう」と語った。
Raskinはさらに、「要は、仮に評判の悪い表現者に対する課税が合憲であれば、ポルノや、Howard Sternなど、一般人が嫌悪感を抱く表現者らには99%の税金が課されるだろう」と述べ、さらに「しかし、課税する力というのは結局(表現や言論を)破壊する力であることを裁判所は理解している」と語った。
直近のケースでは、Minneapolis Star Tribuneとミネソタ州の税務当局が争った裁判で、米最高裁は新聞に使用されている紙やインクに課税しているミネソタ州法に対し違憲判決を下した。
「Internet Safety and Child Protection Act of 2005(インターネット上の安全および児童保護法)」と呼ばれるLincolnの法案の適用対象となるのは、アダルトサイトの利用者に関する情報を記録するよう義務付けられているサイトのみだ。だが、この記録保持義務自体も論議を呼んでいる。Lincolnの法案によると、こうしたアダルトサイトは、「無料コンテンツを含む全てのポルノコンテンツを表示する前に」税金を支払い、利用者の年齢を認証する技術を使用しなくてはならない。
米議会はこれまでも幾度となくインターネットに対する検閲を行おうとしてきたが、最高裁はほとんどの場合、それらの法案を却下してきた。最高裁はこれまでに、「下品な」コンテンツを禁じる米通信品位法(Communications Decency Act:CDA)に対し違憲判決を下し、オンライン上の「未成年者に有害な」コンテンツを標的とした児童オンライン保護法(Child Online Protection Act:COPA)に対する差し止め命令も支持した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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