堅調な株価推移が物語る三菱電機の底力

 主力ハイテク銘柄の株価推移がいまひとつ鈍いなかで、三菱電機の株価の強さが目立っている。静かに進展をみせている構造改革に秘められた底力を探った。

 三菱電機の2005年3月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高3兆4106億円(前々期比3%増)、営業利益1206億円(同30%増)、税引き前利益1023億円(同21%増)、純利益711億円(同59%増)と、非常に好調な決算となった。

 部門別の営業利益でみると、FA機器や自動車電装品などを手掛ける産業用メカトロニクス部門が前々期比10%増の723億円。家庭電器部門は海外中心にエアコンが、国内では冷蔵庫などがそれぞれ好調で同11%増の256億円となった。さらに、2004年3月期には赤字となっていた電子デバイス部門も、パワー半導体などの好調が寄与して営業利益段階で黒字に転換した。

 2006年3月期の連結業績見通しについては、売上高3兆4500億円(前期比1%増)、営業利益1300億円(同8%増)、税引き前利益1200億円(同17%増)、純利益750億円(同5%増)を見込んでいる。

 しかし、第1四半期(2005年4〜6月)の各部門の業績が順調に推移していることに加え、現状では円相場も想定に比べて円安傾向が継続していることから、上方修正の可能性が高まっている。

 三菱電機の大きな特徴は、各事業部門とも順調に利益が出せる収益体質を構築つつある点だ。典型的なのは、コスト削減策だ。同社は2007年3月期までの2年間で、グループの資材や部品の調達コストを2割削減する「AΣ(エーシグマ)21活動」を提唱している。鋼材などの材料価格の高騰が続いているが、2年間で3000億円のコストを削減して収益を下支えする。

 また、2005年3月期に1400億円だった中国などアジア地域からの調達金額を1700億円に拡大する。中国・上海の検査拠点で不良部品のチェック機能を充実させ、品質確保とコスト削減の両立を図っていく方針だ。

 いわゆる総合電機といわれている各社の収益を圧迫し続けてきたのが、電子デバイス部門だが、三菱電機ではこの部門の収益改善の見通しがたってきたことが注目される。大きな特徴の1つとして、自動車電装化に伴う動きがある。ハイブリッド車の普及拡大に伴って、こうした用途向けのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の本格立ち上がりが期待されている。トヨタ自動車のハイブリッド車である「プリウス」に使用されているIGBTモジユールはトヨタの広瀬工場で生産されているといわれるが、工場の生産能力には限界があり、一部では三菱電機製のモジュールが使用されている模様だ。

 今後トヨタでは、海外向けも含めて高級車種でもハイブリッドカーを展開していくものと予想されるため、大容量IGBTに対する需要が急速に拡大する見通しだ。大容量IGBTは、世界的にも三菱電機など、3、4社に限定されているため、ビジネスチャンスはかなり拡大するものと見込まれている。

 さらに、総合電機の収益を圧迫してきたもう1つの事業分野である家庭電器部門でも、このところ「白物家電」の分野で「ななめドラム洗濯乾燥機」、「高機能食器洗い乾燥機」などの登新登場で高付加価値化の傾向が強まり、採算の改善がみられはじめている。三菱電機でも衣類のニオイを除去し、花粉をキャッチする洗濯乾燥機を発売して好評を得ている。

 三菱電機の株価は、6月8日に年初来高値の600円をつけて以降じり安基調をたどってきたが、先週末の24日には前日比7円高の588円高値引けと反発の兆しをみせている。今後は年初来高値の600円を上回って新たな相場展開となる可能性が高そうだ。

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