「(2004年5月に発表した)2007年3月期に営業利益を3000億円にするという目標を達成するのは無理だと思っている」――富士通代表取締役社長の黒川博昭氏は5月25日、2006年3月期の経営方針説明会において先行きを懸念する発言を行った。
これは、ハードウェアやシステムの価格下落が想定以上に進んでいるためだ。「毎年1%ずつ原価率を下げていけばいいと考えていたが、価格の下落が激しくて実現は容易ではない。乱暴(な目標)だった」(黒川氏)
富士通代表取締役社長の黒川博昭氏 |
同社は2005年3月期の業績実績も目標未達に終わっており、特に利益の差額が大きい。期初には売上高4兆9500億円、営業利益2000億円、純利益700億円と予想していたが、実際には売上高が4兆7627億円(予想比4.4%減)、営業利益は1601億円(同20.0%減)、純利益は319億円(同54.4%減)にとどまった。
業績不振の主な要因はソフトウェア・サービス部門の不採算案件だ。同社は2004年3月期にも約70件の資金回収が見込めないとして、特別損失を683億円計上している。しかし、同社でさらに調査したところ、全部で135件の不採算案件があることが発覚した。このため、150億円の追加損失を計上した。なお、このうち95件については案件が完了しており、2006年3月期第3四半期(2005年10月〜12月)までには残りの案件もほとんどが完了する見通しという。
不採算案件の多くは2001年から2003年に作業を開始している。黒川氏は「個人プレーによる営業が多く、案件の取り方(見積もり)が甘かった」と話す。案件を精査しないまま受注してしまい、しかも「営業やSEが『顧客との交渉によって収支を改善できる』と言ったために様子を見ていた」(黒川氏)ために、結果として傷を広げる形となった。2005年3月期は、同社のSEのうち、33%が不採算案件に携わっていたという。「優秀な社員ほど不採算案件に回す必要があり、新規案件に対して機会損失を招いていた」(黒川氏)
2006年3月期は不採算案件の発生を防ぐため、営業活動のビジネスプロセスを標準化していく。2005年4月には商談の段階ごとに審査を行う「SIアシュアランス本部」という社長直轄の組織を新設した。また、月次で案件の進捗状況を把握する「SI進行基準」を導入し、収益状況を確認できる体制も固めた。
また、子会社を合併して製品開発のスピードアップやサポートの強化を図る。2004年10月には保守・運用サービス事業を行う富士通サポートアンドサービス(Fsas)を完全子会社化しており、2005年7月には富士通インフォソフトテクノロジなど5社を吸収合併する予定だ。
これらの取り組みにより、サービス部門の2006年3月期の売上高は前期比8.1%増の2兆2400億円、営業利益は同30.8%増の1400億円となる見込みとしている。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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