携帯電話にHDDを搭載させようと、いくつかのベンダーは0.85インチという小型HDDの開発に躍起になっている。しかし米Seagateは、違うアプローチを模索しているようだ。
サーバ向け製品の価格競争に疲弊したSeagateにとって、デジタル家電は非常に大きな成長市場だ。2005年第1四半期(1月〜3月)における同社のデジタル家電向けHDDの出荷量は前年同期比296%増と大幅に伸びている。なかでも1インチHDDのST1シリーズが好調といい、同四半期中に190万台を出荷した。
しかし小型HDDの製品リリースにおいて、Seagateはこれまで他社に遅れを取ってきた。1インチHDD製品の発表は、米ベンチャーのCorniceや日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)に約1年遅れた。また、iPodが採用している1.8インチHDDや、携帯電話用として開発が進められている0.85インチHDDも手がけていない。
Seagateはデジタル家電向けのHDD市場をどう見ているのだろうか。同社の顧客説明会のために来日した米Seagateコンシューマー・エレクトロニクス・ビジネス・デブロップメント担当シニアバイスプレジデントのPat O'Malley氏に、同社が手がけていない0.85インチHDDや1.8インチHDDについて、また、HDDの容量を拡大させる技術として注目される垂直磁気記録技術への取り組みについて聞いた。
--Seagateはデジタル家電向けのHDDを戦略製品の1つに掲げています。具体的にどのようなデジタル家電の市場が今後伸びていくと考えていますか。
今後2〜3年の範囲で考えると、いくつか挙げられます。1つはDVD/HDDプレイヤーやPVR(Personal Video Recorder)です。日本、米国、欧州でそれぞれ異なる市場が確立されています。Seagateはこの市場のリーダーです。成長の伸びは遅いかもしれませんが、大きな成長を見込んでいます。
2つめはハンドヘルド端末です。この分野向けのHDDには1.8インチと1インチがありますが、Seageteは1インチのみを手がけています。用途は多岐にわたっており、MP3プレイヤーやデジタルカメラ、コンパクトフラッシュなどがあります。市場の伸びに上下はあるものの、今後も高成長が見込める分野です。
最後に携帯電話があります。この市場は現在フラッシュメモリが主流ですが、Seagateや東芝、日立GSTなどがHDDで参入しようと狙っています。HDDベンダーにとって、今後もっとも大きい市場になる可能性を秘めています。この市場に参入するには、HDDの信頼性や堅牢性を実証し、費用対効果の高いソリューションを提供することが必要です。しかもそのHDDは携帯電話に収まる大きさでなければなりません。我々は携帯電話端末にHDDが使えることを端末ベンダーに実証しようと努力しています。
--その携帯電話市場に向けて、東芝やSamsungが0.85インチのHDDを開発していることを明らかにしています。Seagateは0.85インチHDDを手がけていませんね。
0.85インチHDDはSeagateにとって魅力があるとは言えません。なぜなら、大きさ、容量の両面でフラッシュメモリと激しく競合するからです。小型化するほど容量は小さくなり、フラッシュメモリとの差別化が難しくなります。
また、厚みの問題もあります。0.85インチHDDは結局1インチHDDと厚みは変わりません。Seagateは0.85インチHDDを手がけるのではなく、1インチHDDを薄型化できないかと考えています。これならば大容量でも携帯電話に搭載しやすくなります。
--米SanDisk創業者で社長兼CEOのエリ・ハラリ氏は、デジタル家電向けにはHDDよりもフラッシュメモリが有利だと話しています。
大容量が求められる分野では間違いなくHDDが勝つと思いますが、4〜6Gバイト程度であればフラッシュメモリに競争力があります。ただし、携帯電話で音楽をダウンロードしたり動画を視聴したりするようになれば、容量はどんどん必要になります。
HDDはフラッシュメモリに比べて容量の伸び幅が大きい点で優位性がありますが、フラッシュメモリには低消費電力や堅牢性の点で分があります。HDDは省電力化や堅牢性の確保といった方向に進化を続けており、逆にフラッシュメモリも容量を拡大する方向で進化しています。HDDとフラッシュメモリの戦いは、しばらく接近戦になるでしょう。
今年は4〜6Gバイト、来年は6〜8Gバイトの分野が主戦場になるでしょう。しかし容量が8Gバイト以上になればHDDが勝つと思います。また、フラッシュメモリは書き換え回数が10万回以上になると信頼性の面で疑問が出てきます。こういった面で、HDDのほうが有利と言えるでしょう。
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