インターネットを使って封切前の映画のコピーをひとつでも配布した者には、最長で3年の懲役刑を言い渡せるとする法案が米議会で可決された。この法案が立法化されれば、オンライン著作権侵害者に対する罰則規定のなかでもこれまで最も厳しいものになる。
米国時間19日に議会で可決されたこの法案は、内容はあまりに広範に及んでいるため、著作権で保護された映画、ソフトウェアプログラム、音楽ファイルがまだ一般に発売/公開されていないことを知りながら、それらのコピーを1部でも共有フォルダ内に置いた者は国家的重罪犯となる可能性があり、さらに最高25万ドルの高額な罰金を課されることもあり得る。また、実際にダウンロードが行なわれたか否かに関係なく罰則が適用される。
この法案が立法化されれば、オンライン著作権侵害者の訴追は格段に容易になる。現行法では、著作権で保護された複数の作品のコピーまたはレコード盤をそれぞれ10枚以上複製/配布し、なおかつそれらの作品の市販価格の総額が2500ドルを超えた場合にのみ、3年以下の懲役刑が適用される。
これまで米司法省は、一般に、最も悪質なケースにのみ刑事罰を適用してきたが、同法案が立法化されれば、何気なくPtoPネットワークを利用しているユーザーも刑事罰の対象とされかねない。
米下院は、議論の余地のない立法に用いられる手続きによって、「Family Entertainment and Copyright Act」と呼ばれるこの法案を圧倒的多数で可決した。同法案はすでに上院で承認されているため、あとはBush大統領の署名を待つのみだ。
エンターテインメント業界は、著作権で保護された作品が一般公開前にPtoPネットワーク上で大量に出回る事態に対し懸念を強めてきているが、これらの刑事罰の立法化は同業界にとって今年の最優先課題であった。
全米レコード協会(RIAA)のMitch Bainwol会長は、「この法案は、一般公開前の(作品に対する)著作権侵害行為に対して、政府や知的財産権保有者による法の執行を容易かつ迅速に行えるようにしている点で、現行法の不備を補うものだ」と述べ、さらに「(同法案を可決した)議会を称えたい」と付け加えた。
同法案を支持する議員らは、議会で著作権侵害者に対する懲役刑の厳罰化についての承認を得るため、これとは全く関係ない、映画から不快感を与える内容を削除するための技術を合法化する法案と抱き合わせる方法を取った。その技術に関する法案は、米国の映画製作会社と全米映画監督組合(Directors Guild of America)が、暴力シーンやヌードシーンにフィルターをかけるDVDプレイヤーをめぐりClearPlayを提訴した裁判に対処するために策定された。(同訴訟では、Parents Television CouncilやFocus on the Familyなどの家族に関する有力な市民団体がClearPlayを支持した。)
PtoPネットワークの運営者らは議会が19日に同法案を可決したことを非難している。
「どうやら、エンターテインメント業界が議会に再度圧力をかけて、税金を使って業界内部の問題を処理させたようだ」と語るのは、PtoPソフトMorpheusの配布元であるStreamCast NetworksのCEO、Michael Weissだ。Weissによると、初期にインターネットに流出した映画/音楽ファイルの多くは、エンターテインメント業界内部の人間によって提供されたものだという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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