日本ベリサインは3月25日、取締役副社長兼COOを務めてきた橋本晃秀氏が、株主総会で承認されて正式に代表取締役社長兼CEOに就任したと発表した。前社長の川島昭彦氏は非常勤顧問となった。
橋本氏は今後の戦略を説明し、まず「SSLサーバ証明書やPKI(公開鍵基盤)を使った電子認証局の事業を核にして引き続きリーダーとしての地位を確固たるものにしていくことは変わらないが、2005年以降はセキュリティコンサルティングサービスなども手がけて総合的な情報セキュリティベンダを目指す。そして、2010年以降はセキュアなインテリジェントインフラを支える総合サービスプロバイダーへ変貌する」と抱負を語った。
左から前社長の川島昭彦氏、新社長兼CEOの橋本晃秀氏、米ベリサイン チェアマン プレジデント兼CEOのストラトン・スクラボス氏 |
足下の状況は、2004年12月現在でベリサインサーバID(サーバ証明書)の利用枚数が3万7600枚となっている。しかし、橋本氏は「他社との競争が激しくなっているうえで、ベリサインの料金は高額だとの指摘を受け、そのために中小企業をなかなか顧客にできないでいる」と、今後の成長を考えると裾野を広げていかなければならないことを示した。
料金が高額だという指摘について橋本氏は「証明書を発行する際には、登記簿謄本や帝国データバンクのデータなどを利用して、かなり厳格に企業の実在証明しているので手間と時間がかかってしまう」と説明する。
これに対して「競合他社では提出された企業名など実在情報とドメイン名が正しく合っていれば証明書を発行する『ドメインマッチング』で低価格のサービスを行っている企業もあるが、調査ではそのうち本当にマッチングしているのは20〜30%程度だ」と信頼性の差を力説した。ただし、ドメインマッチングを全否定しているわけではなく、将来的にベリサインが同様の低価格サービスを行う可能性がゼロではないことも示唆した。
また、中小企業へも裾野を広げていく方策として、パートナー販売を強化するためにパートナー営業本部を設置した。そして、ベリサイン内に認証局を構築する電子証明書発行のアウトソーシングサービス「ベリサイン マネージドPKI」では、電子証明書の発行を500枚以上から受け付けているが、これでは大企業しか利用できない体系なので撤廃し、必要な数だけ証明書を販売する切り売り方式も導入を検討している。
さらに、顧客満足度を向上させるために技術的、人的サポートにも力を入れる。そこでまずは、日本ベリサインの日本人開発者を米国の開発チームに派遣して共同で開発を進めることになった。米ベリサインのチェアマン プレジデント兼CEOのストラトン・スクラボス氏は「これまでは米国以外のスタッフが開発に携わることは許してなかったが、個人情報保護法やe-文書法の施行など法整備が進む中で日本を最重要市場として捉えている。技術的にも業績的にも日本に引っ張っていってもらいたい」と期待を述べた。日本人が開発から携われば、日本市場のニーズを的確に汲み取れて、迅速にサービスへと反映できるというわけだ。
こうした戦略の一方で、同社はフィッシング詐欺対策の新サービスとして、大量のメールを配信する企業や組織向けに「ベリサイン セキュアメールID」を4月下旬から開始する。配信する電子メールへの電子署名を行うための電子証明を発行するサービスだ。ベリサイン セキュアメールIDにより署名された電子メールの受信者は、メールの送信元の実在性が日本ベリサインによって認証された企業・組織であることや、メールの内容が通信途中で改ざんされてされていないことが確認できる。そのため、証明書は、個人名ではなく企業や組織名のメールアドレスに対して発行される。
証明書の有効期限は2年間で、受信可能なメールソフトウェアはOutlookもしくはOutlook Express、Shuriken ProなどS/MIMEに対応したソフト。
このほかの新サービスなどについて橋本氏は、「日本人が加わった開発チームができたこともあり、日本で大いに普及が期待できるRFIDやVoIPなどへも電子証明書の利用を考えていきたい」と語った。
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