IntelのCEO、Craig Barrettは先日、ムーアの法則には限界が見あたらないと発言した。これはIntelにとっては朗報といえるが、しかしわれわれユーザにとっては本当にそれほど素晴らしいことなのだろうか。
確かに「新しモノ好き」の人にとっては最高の時代が続くことになるだろう。何に使ってよいのか分からないくらい高速なCPU処理速度がまもなく手に入るのだから。
しかし、最新機能を搭載したコンピュータが発売されるとか、最新のソフトウェアが開発中であるとかいう話を聞くと、たいていのCIOはうんざりするだけである。チップの性能向上サイクルが短くなると、IT部門の責任者はまさにトレッドミルのなかを走り続けるハムスターのような状態になってしまう。常に最新かつ最高の機能を手にするためだけに、最速のハードウェアにアップグレードし続けることを余儀なくされるからだ。
しかし、これまではそうする以外にあまり選択肢がなかった。あまりにも速いペースで技術が進歩するため、企業は同じところに留まっていられない。競争相手と同等のITインフラを維持するために高い経費をかけるか、それとも競争に負けるかのどちらかしかない。インフラを提供する側からすれば何ともぼろい商売である。
しかし、そんな状況も変わろうとしている。
コンピュータインフラをリースして、使った分だけ料金を支払うというビジネスモデルの登場で、IT業界全体の状況が変わり始めている。定期リースという形をとることもあれば、従量課金を選ぶという手もあるが、どちらも基本的は考え方は同じである。企業は、高価なコンピュータインフラを購入する代わりに、厄介なアップグレード作業を他社にまかせてしまうことで、常に最新技術が導入された状態を維持できる。将来、そうしたITインフラのリースサービスをビジネスとして展開しようとする企業がどんどん増えている。
タイムシェアリングの考え方は、メインフレーム全盛時代の1960年代初めに考え出された。タイムシェアリングの場合、企業は実行処理の回数に応じて料金を支払い、ユーザが複数の端末からメインフレームの処理能力を共有するための、コスト効率の良い方法を実現することができた。グリッドインフラとさまざまな「サービスとしてのソフトウェア」モデルが登場したいま、この概念が分散コンピューティング時代に合わせた形で新たに浮上している。
ソフトウェアをサービスとして提供するというアイデアは以前にも存在していたが、そうしたサービスを提供する企業はインターネットバブルの盛りに一時期注目されたものの、評判はあまり良くなかった。これらの企業の多くは、景気の後退とともに財務状況が悪化し、結局消滅してしまった。これはいくつかの意味で不幸なことだった。ソフトウェアを配布するための、いわゆるASP(アプリケーションサービスプロバイダ)モデルがあのとき本格的に立ち上がって、うまく軌道に乗っていたら、ハードウェアについても同じ考え方が生まれていたはずだ。
しかし、こうしたアイデアは単に、時期尚早だっただけで、完全につぶれてしまったわけではない。そして、問題はこうしたサービスがどのくらい普及するかという点である。それがASPの単なる焼き直しであり、一時的な流行ですぐに消えてしまうだろうという人もいれば、大手IT企業の断固とした反対にあってつぶされるだけだという人もいる。彼らにすれば、自分たちの仕事がアウトソーシングされてなくなるのだから、このアイデアに反対するのも無理はない。
しかし、こうした動きはまだまだ始まったばかりである。「次の大きな波」と称して結局何も起こらず、一笑に付される可能性も大いにある。しかし、今はまだ芽生えたばかりだが、ハードウェアのリースモデルが実を結べば、現在のIT業界におけるさまざまな力関係が大きく塗り替えられる可能性がある。
Sun Microsystemsは、間違いなくそうなることを願っている。Sunの業績は、ドットコムバブルがはじけて以来、現在まで低迷を続けている。私も同社CEOのScott McNealyのお粗末な仕事ぶりについて書いたことがある。Sunはいま重要な分岐点に立たされているが、同社が最近発表した計算処理能力のリースモデルは興味深い。このモデルでは、ユーザー企業に対し、ソフトウェアを利用する社員1人につきいくらという形で料金を請求することになる。1時間あたりのCPUの使用量をどう定めるかについてはまだはっきりしていないものの、サンは1CPUにつき1時間1ドルという価格を設定している。
このビジネスモデルがIT業界に衝撃を与えるかどうかを論じるのは時期尚早だが、もしこのモデルが普及すれば業界にとっての先触れとなる可能性もある。
私はまだこのサービスを利用するまでには至っていない。しかし、IT部門の責任者は、すぐに陳腐化する技術に文句を言いながら金を出すという習慣をそろそろやめてもよい頃合いだ。彼らは、必要な新しい技術を導入することに関して、もっと良い方法があるはずだということを、誰よりもよく認識しているのだから。
筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者
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