番号ポータビリティと新規参入が業界を変える
2006年以降には各社のシェアが大きく変動する可能性が出てきた。1つは番号ポータビリティの導入、もう1つは新規参入事業者の存在だ。
番号ポータビリティについては、総務省が2003年11月から2004年3月まで研究会を開催し、制度のあり方について各事業者の代表や有識者による議論を行った。この検討会の答申を受け、5月には番号ポータビリティの導入に関するガイドラインを公開。2006年の導入を呼びかけた。各社は実現方式や導入にかかる費用の負担方法などの検討を行っている段階だ。
新規参入事業者の問題は、総務省や既存事業者の思惑と新規参入を狙う事業者の意見が真っ向から衝突し、大きな議論となっている。
ことの発端となったのが、ソフトバンクBBが総務省に対して起こした行政訴訟だ。同社は2004年8月6日に総務省がまとめた「800MHz帯におけるIMT-2000周波数の割当方針案」に対し、議論の透明性が欠けていること、新規参入を希望する事業者の意志を無視していることを挙げ、800MHz帯周波数割り当て方針案の実施差し止めと、新規割り当て方針案の策定と新規免許申請の受付を求める訴訟を起こした。
まず、総務省の案は次の通りだ。800MHz帯は現在、ドコモとKDDIの2社に割り当てられており、ドコモは58MHz、KDDIは30MHzを利用している。しかし周波数が細切れに割り当てられているために利用効率が悪いこと、海外とは上り/下りの周波数帯が逆転しているために九州など一部の地域で電波干渉が起きていることなどから、両社が利用する周波数帯を再編し、815〜850 / 860〜895MHz帯をそれぞれ30MHzずつ割り当てる。
新規参入事業者に対しては、2012年までに800MHz帯を再編することで700/900MHz帯を割り当てる。また、1.7GHz帯の再編を進め、2006年度には携帯電話で利用できるようにする。同時に2GHz帯をTDD(時分割複信)方式に割り当てるとする。
800MHz帯をめぐってソフトバンクBBと既存事業者が激突
これに対し、ソフトバンクBBは800MHz帯を新規事業者にも割り当てるべきだと主張する。800MHz帯は1.7GHz帯に比べて電波が屋内や建物の陰にも届きやすく、有利な周波数帯だというのがその理由だ。同社代表取締役社長兼CEOの孫正義氏は「総務省は不利な周波数帯を新規事業者に割り当てようとしている」と訴える。
ソフトバンクBBの案は、ドコモ、KDDI、新規事業者の3社が800MHz帯を20MHzずつ取得し、1.7GHz/2GHz帯と併用するマルチバンド方式を採用するというものだ。「マルチバンド対応に必要なチップの価格は3ドル程度だ。基地局も同一キャビネットに800MHz帯と1.7GHz帯のカードを差し込むだけで対応でき、コスト差はわずかしかない」と孫氏は話す。
ドコモとKDDIはソフトバンクBB案に対し、「到底受け入れられない」と反対する。両社はこれまで多額の費用をかけて3Gサービスを開発・普及させてきており、800MHz帯再編のためにも周波数の移行費用を負担する。ソフトバンクBBは3G技術が成熟してきたところで安い価格で技術を利用し、しかも既存事業者が利用していた周波数帯を奪う形で参入するのは納得できない--これが両社の見解だ。
KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は、「今有効活用している周波数をいつでもほかの事業者が奪えるのならば、誰も事業ができなくなる。既存の方式を利用して周波数を他社から取り上げるのはエゴだ」と孫氏の姿勢を厳しく非難している。また、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は「2Gから3Gへの移行が進めば一部の地域で800MHz帯を早期に利用できるかもしれないが、2006年から全国的に800MHz帯を利用するのは無理だ」として、ソフトバンクBBの計画を疑問視している。
総務省では現在、800MHz帯や1.7GHz帯、2GHz帯の利用拡大に関する検討会を開催し、周波数の新規割り当てについて議論を行っている。検討会の答申を受けて総務省は割当方針を決めると見られ、早ければ2005年半ばに新規事業者に免許が交付される見通しだ。新規参入を狙うイー・アクセスは2006年末、ソフトバンクBBは2007年半ばの事業開始を目標としている。
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