「総務省はこれまで、新しい通信技術を市場導入するときに新たな周波数を割り当て、新しい産業を興してきた。既存の技術を使い、既存の周波数を利用して新規参入を行うのはいかがなものかと思う」--KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は12月15日、定例会見を開き、800MHz帯を利用して携帯電話事業に新規参入を目論むソフトバンクBBの姿勢に苦言を呈した。
小野寺氏はまず、これまでの周波数割り当ての歴史について説明。800MHz帯は当初アナログ方式に、1.5GHz帯はPDC方式に割り当てられ、2000年にはW-CDMA/CDMA2000方式に対して周波数の割り当てが行われた。これは新技術の導入によって新たな市場を作るとともに、競争を促す狙いがあった。
800MHz帯と2GHz帯のマルチバンド端末を手にするKDDI代表取締役社長の小野寺正氏 |
「今回の議論も、もともとは2GHz帯をTDD(時分割複信)方式に割り当てて新規参入を許可するためのものだった。ソフトバンクBBも当初はTDD方式を採用すると言っていたのに1.7GHz帯に手を挙げ、800MHz帯が欲しいと言ってきた」(小野寺氏)
ソフトバンクBBの案では、KDDIとNTTドコモが現在利用している800MHz帯を集約し、両社に加えて新規事業者にも割り当てるというものだ。これに対し小野寺氏は「今有効活用している周波数をいつでもほかの事業者が奪えるのならば、誰も事業ができなくなる。既存の方式を利用して周波数を他社から取り上げるのはエゴだ」と厳しく非難した。
ソフトバンクBB代表取締役社長の孫正義氏は、ドコモとKDDIが800MHz帯と2GHz帯の両方を使ったマルチバンド端末を市場投入することから、新規事業者にも800MHz帯と1.7GHz帯を割り当ててマルチバンドで競争するべきだと訴えている。この点について小野寺氏は、「世界中のどこの事業者に聞いても、あえてマルチバンドでやろうというところはない。それはシングルバンドよりもコストがかかるからだ。我々もマルチバンドにしたいのではなく、(周波数を再編するために)せざるをえないからやっている。なぜ800MHz帯にこだわるのか理解できない」と話し、「800MHz帯と1.7GHz帯の両方を持てばどちらかが必ず空いてしまう。これは周波数を有効活用できないと言っていることと同じだ」とした。
着うたフルは30万ダウンロード達成
小野寺氏はauが11月より始めた音楽配信サービス「着うたフル」の現状についても紹介した。12月13日時点の累計ダウンロード数は36万1000件で、「ユーザー1人あたり2曲以上ダウンロードしている計算になる」という。
2005年度には、モバイルFeliCaに対応した端末を市場に投入する方針。ライバルのドコモは2005年度中に下り最大14.4MbpsのHSDPAを商品化する計画だが、今後のEV-DOの高速化などについては明らかにしなかった。
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