日本アイ・ビー・エムは11月4日、Rationalブランドの新しい開発ツール製品群を発表した。同社は10月7日に開催した「IBM Rational Software Development Conference」の席上で「『WebSphere Studio』を含むアプリケーション開発環境をRationalブランドに統一する」と発表しており、今回の会見はその詳細に当たる。日本IBM ソフトウェア事業 Rational事業部長宮橋一郎氏は「これまでIBMでは、WebSphereでトランザクション管理とビジネス統合を実現し、DB2でデータ管理を行い、Tivoliでシステム管理、全体をまたぐコラボレーションとしてLotusを提供してきた。4ブランドでシステムの実行・管理ならびにコラボレーションをカバーしてきたが、Rationalブランドでは“ソフトウェア開発”という構築フェーズをしっかりサポートする」と述べる。
日本IBM ソフトウェア事業 Rational事業部長 宮橋一郎氏 |
ソフトウェア開発は、ビジネスプロセスの「分析」に始まり、アプリケーションとデータの「設計」、実際の「開発」、そして「テスト」という一連の工程で形成される。そこで新たにリリースされる製品は以下の7つ。いずれも分析からテストに至る、ソフトウェア開発の一連の工程をサポートする体系になっている。全製品、12月4日より同社サイトよりダウンロード開始。CD-ROM版は2005年1月7日より。
IBMになったRational、どう変わった?
宮橋氏は「RationalはIBMの1ブランドだが、Rationalが従来から持っていた標準技術への対応は依然そのままで、さらにIBMの各種製品群への統合を強くしている」とアピールする。まず標準技術への対応についてだが、次の2つの点を強調している。1つは、現在オープンソースの開発環境でデファクトスタンダードとなった「Eclipse」の最新バージョンEclipse 3.0をベースに7製品を開発したこと。ソフトウェア事業 Rational事業部 ブランドマネージャの渡辺隆氏は「Eclipseは拡張性に優れたオープンソースの開発環境。サードパーティまたは開発者自身が作った拡張コンポーネントを自由に組み入れることで、誰にとっても最適な開発環境が生まれる」と語る。
日本IBM ソフトウェア事業 Rational事業部 ブランドマネージャ 渡辺隆氏 |
標準技術への対応としてもう1つ見逃せないのが、WebLogicやMicrosoft .NETへの対応だ。Rational Application Developer for WebSphere Softwareでは、WebLogicもサポート。これは「従来よりWebLogicへも対応していたRationalブランドのオープン性を、新製品でも踏襲する方針だ」(渡辺氏)という。
さらにIBM Rational Functional Testerでは、EclipseのHyadesを核としたJavaアプリケーションの回帰テストツールに加え、マイクロソフトの「VisualStudio .NET」を組み込んだVisual Basic .NET用回帰テストツールの2つを用意。マイクロソフトの.NETアプリケーションも、WebLogic上のJ2EEアプリケーションも、「Rationalブランド製品群で」というわけだ。
IBMの1ブランドとしての優位性はどうか。WebSphereやDB2などの各ミドルウェアに準拠しているという点もあるが、今回の7製品に関しては「9カ国同時に発売する」(渡辺氏)というように、グローバル企業ならではの強みを活かしたメリットもある。これにより、オフショア開発において同じ環境を同時に使いながら、作業を進めることができるという。
Rationalが目指すのは「ビジネスとITの融合」
今回、7製品を一挙にリリースする背景には、ビジネスとITをつなぐ「ビジネス駆動型開発」を支援するという目的があるようだ。
宮橋氏は「業務の流れを図式化するエンドユーザー、アーキテクトや開発者、テスト担当者などから成るソフトウェア開発チーム、そして運用担当者という、ビジネスサイドとITの開発・運用サイドのサイクルをきちんと回していく」と話す。そのため、業務担当者がビジネスプロセスを設計する「WebSphere Business Integration Modeler」のフロー図をUMLに変換し、Rational Software Modelerに読み込ませる形でシームレスに連携させることが可能。ビジネス側の要求を開発環境にインポートすることで、ビジネス要求に基づいたシステムを高速かつ高品質で構築することが可能になるという。ちなみに以前の「Rational Rose」や「Rational XDE」からのインポート機能も備えており、「すべてが完全に互換できるわけではないが、既存資産を有効活用できる手段は提供している」(渡辺氏)とのことだ。
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