「(ウェブブラウザの)Firefoxの正式リリースは11月9日になる。(メールクライアントの)Thunderbirdはバージョン0.9が数日中にリリースされ、正式版は11月末までに登場するだろう」--Mozilla Foundation技術部門ディレクターのクリス・ホフマン氏が11月2日に都内で会見し、同団体の現状について紹介した。
Mozilla Foundationは2003年7月に設立された非営利団体(NPO)。米AOLのNetscape部門で開発が進められていたFirefox(旧Phoenix/Firebird)や、Thunderbirdの開発を進めている。
主な活動資金源は企業や個人からの寄付で、設立時にはAOLが200万ドルを提供した。IBMやSun Microsystems、ロータス1-2-3の開発者であるMitch Kaporなども寄付を行っている。12人の中心メンバーのほか、IBMやSun、Red Hatなどの開発者が50人ほどフルタイムで開発に携わっているという。
Mozilla Foundation技術部門ディレクター クリス・ホフマン氏 |
FirefoxはInternet Explorer(IE)に対するセキュリティ上の懸念が高まるなか、IEに代わるブラウザとして注目を集めている。ホフマン氏によれば、IEの脆弱性を利用したウイルスによって、ウェブサイトにアクセスするだけで感染するウイルスが発見された6月頃からFirefoxのダウンロード数が急増したという。「2カ月ごとにダウンロード数が倍増している」(同氏)。バージョン0.8は4カ月で330万件、0.9は3カ月で650万件、プレリリースバージョンはわずか6日間で150万回のダウンロードを記録した。「環境によっても異なるが、市場シェアはおそらく6%以上あるだろう」(ホフマン氏)
また、Firefoxの正式版リリースに合わせてNewYork Times紙に全面広告を出すために始まった寄付金キャンペーンでは、10日間で25万ドルが集まったという。
ホフマン氏がIEとFirefoxの違いとしてあげるのは、安全性の高さと使い勝手の良さだ。セキュリティベンダのSecuniaの調査によれば、IE 6で発見された42の脆弱性のうち、深刻度が最も高いと判断されたものは14%あった。Firefoxで同じ期間中に11の脆弱性が見つかったが、深刻度が最も高いものは1つもなかったという。「IEのほうが脆弱性が多く、しかも深刻なものが多い」(ホフマン氏)
また、MicrosoftがIEで利用しているActiveXを採用していないことも安全性を高めているとホフマン氏は言う。ActiveXがアドウェアやスパイウェアをひそかにインストールするのに利用されているためだ。ただしActiveXを利用した一部のサイトが利用できないなど、互換性の面ではやや課題が残るようだ。
使い勝手に関しては、RSSフィードが読み込める機能や、ページ検索のハイライト機能、GoogleやAmazonなどの検索機能が利用できる統合検索機能などが備わっている。ポップアップ広告をブロックする機能もあり、これはIEもService Pack 2(SP2)で対応している。ホフマン氏は「Microsoftは我々の動きを見てポップアップ機能を反映させたのではないか」と話した。
ダウンロードのファイルサイズは4.5Mバイトと軽いのも特徴だ。IEやNetscapeに登録したブックマークや保存されているパスワードなどがインポートできるようになっており、ユーザーがFirefoxに移行しやすいようになっている。
MozillaではPC以外の端末についても対応できるように開発を進めているという。Minimo(Mini Mozilla)プロジェクトという名称でPDAや携帯電話などで動くブラウザを開発中で、2月にARM対応のMinimo 0.1がリリースされている。「企業はOSにLinuxを利用し、ブラウザにMinimoを使いたいと考えているようだ」(ホフマン氏)。このプロジェクトにはNokiaが開発資金を提供したことが明らかになっており、ホフマン氏も「数社に関心を持ってもらっている」としている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」