オンライン音楽サービスの前に立ちはだかる「コーデックキラー」問題

John Borland(CNET News.com)2004年10月25日 16時24分

 Van Halen、Hole、Sarah McLachlan、あるいはThe Beatlesでもよい。オンラインでダウンロードした音楽を聴いていてちょっと変だなと感じたとしても、そう感じるのはあなただけではないかもしれない--この問題は「コーデックキラー」によるものである可能性がある。

 Apple ComputerのiTunesやMSN Musicなどのオンライン音楽サービスは、デジタル音楽の売上高がCDの売上高に追いつき、追い越す日が来ると主張している。だが、今日の市場に商品を提供するには、各社はコーデックという技術を使う必要ある。コーデックとは、インターネットを介してファイルをダウンロードできるように、楽曲を比較的小さなデジタルデータに変換する際に使われる技術だ。

 コーデックを使って圧縮された楽曲ファイルを再生しても、平均的な人間の耳では元の楽曲との違いが分からない。しかしなかには、インターネットで利用可能なサイズにファイルを圧縮した場合に異常が確認される楽曲があり、コーデック技術の専門家たちを悩ませている。

 「大体の場合、ほとんどの人の耳をごまかすことができる。だが、常に欠陥を隠せるわけではない」とSound & Vision誌のテクニカルエディターDavid Ranadaは述べる。

 まれにしか発生しないものの、この「コーデックキラー」現象はデジタル音楽の支持者にとって深刻な問題だ。音楽業界がかつて、CDの音質はビニール盤レコードと同じくらい良いと消費者を説得しなければならなかったのと同じで、デジタル音楽企業もオンライン音楽の購入者に対し、デジタルなファイルの形で提供される楽曲はCDに匹敵する音質であることを説得しなければならない。

 アナリストらによると、音がさえないというレベルから元の楽曲にはないノイズが聞き取れるというレベルに至るまで、購入した楽曲の中に何らかの欠陥がいくつか見つかれば消費者は離れていくという。

 この「コーデックキラー」という概念は、音楽を圧縮フォーマットに変換し始めた当初から技術者にはおなじみの問題だ。コーデック設計者の仕事の大半は、異なるデータ圧縮技術を適用した場合にそれが人間の耳にどう聞こえるかを探り、悪影響を最小限にとどめるための作業が占めている。

 コーデックごとにデータの圧縮方法は異なる。だが、今日の音楽圧縮技術のほとんどで採用されている方法は、存在しなくても人間の聴覚に影響のない音を削除するというものだ。

 音楽圧縮技術の多くでは、存在しない音を聞き取るという人間の耳の生理学を利用し、削除しても音が実質的には変わらない音波の要素を探し出すことをベースとしている。MP3やAAC(Advanced Audio Coding)、Windows Media Audioなどでは、この技術が過去10年間で飛躍的に改善している。

 だが、これらの技術では、特定の音で問題が発生する。

 たとえば、共通で使われる技術の1つに、音楽を非常に小さなブロック(たとえば、数十ミリ秒単位)に分割し、各ブロックから少しずつ情報を取り出すというものがある。この技術は、画像におけるぼかし効果に似たものだ。

 この技術が適用された音楽を聴いても、余程耳が良い人でない限り、この「ぼかし効果」に気付かない。しかし、ウッドブロックやカスタネットなどの鋭い音の場合、楽器が実際に音を奏でる前にわずかな音が聞こえてしまう「プレエコー」問題が生じる。

 MicrosoftのオーディオアーキテクトJim Johnstonによると、プレエコーは人の耳を混乱させ、不愉快な音という知覚を生んでいるという。Johnstonは、暗室の中で突然光を当てられたときの目の反応に例えてこれを説明している。

 「カスタネット(のプレエコーに対して人間がもつ知覚は)は、深夜に突然太陽の光を浴びせられたときの感覚に近い」(Johnston)

 他にも問題はある。純粋な音は時として、圧縮するのが難しい。圧縮で使われるぼかし効果が音の純度を傷つけることもあるからだ。また大音量で録音された音楽や低周波音の多い音楽も圧縮するのが難しい場合が多い。

 「発生する問題はコーデックごとに異なる」とオープンソースのオーディオ技術プロジェクトOgg Vorbisを率いるエンジニアの1人Christopher Montgomeryは述べている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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