東芝は10月14日、米Xilinxから90nmプロセスのFPGA(Field Programmable Gate Array)製品の生産を受託したと発表した。ビジネス規模は今後2年間で200億円規模となる見込み。今回の契約に伴い、東芝は新たに250億円を投資して生産設備の増強を図る。
FPGAはチップ製造後でもプログラム変更によって回路を変えられるプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)の一種。Xilinxは半導体の設計のみを行うファブレス企業で、PLD市場で50.2%とトップシェアを持つ企業だ。PLDは半導体市場の中で最も伸びている分野で、データクエストの調査によれば世界のPLD市場規模は2002年が約20億ドル、2008年には約60億ドルになるという。
90nmFPGAの生産は、システムLSIの製造を手がける東芝大分工場で行う。ウエハの製造のほか、テスト工程までを手がける。東芝は2004年度の半導体設備投資額を1540億円としていたが、これに追加する形で250億円を投資する。今回の提携で、Xilinxは東芝に対し製品の前受金として100万ドルを支払う契約を交わしており、これを設備投資の一部に充てる計画だ。
東芝大分工場で試作した300ミリウエハ・90nmプロセスの試作品を手にする東芝の室町正志氏とXilinxのウィム・ロレンツ氏
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東芝を選んだ理由について、Xilinx社長、CEO兼会長のウィム・ロレンツ氏は「日本以外も含めて複数の企業からプロセス技術や製造技術に関する詳細なデータをもらって比較したところ、東芝がベストだった。チップサンプルの提供も受けたが、匹敵するのはIntelくらいというほど高い技術だ。FPGAは非常に複雑で高密度な実装が必要なため、製造が難しい。先端的な技術を持ち、しかもそれを製造できる企業として東芝を選んだ」と説明する。
Xilinxは現在、FPGAの製造を台湾のUMCに委託している。この点についてロレンツ氏は、「我々は常に(FPGAが製造できる)高度な技術を持つパートナーが2社必要だと考えてきた。もう1社パートナーを探していることはUMCも理解しており、今後もUMCとは良好なパートナーシップを継続していく」と話す。東芝とUMCの生産比率については明らかにせず、東芝 執行役常務 セミコンダクター社 社長の室町正志氏は「歩留まりやコスト面で東芝の方が有利であれば比率は大きくなるだろう。そのために努力していく」と述べるにとどめた。
東芝とXilinxは65nmプロセスについても提携していく方針で、すでに共同開発に着手しているという。また、室町氏は「今は明かせないが少し考えがあり、本年度中にさらなる半導体投資の上積みを行う計画だ」と話しており、同社の2004年度の半導体設備投資額は1700億円超になることを明らかにした。
東芝では今回の提携による売上を2005年度で150億円と予測する。Xilinx以外にもファブレスとの提携を進める方針で、「2006年度にはシステムLSI事業の売上高のうち、最大10%が生産委託事業になるだろう」(室町氏)としている。
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