サンフランシスコ発--もしプロセッサの性能が今後も引き続き向上していくとすれば、将来のチップはもっとフレキシブルになる必要がある。
Intelはこのことを念頭におきながら、将来の製品に、設定変更可能なプロセッサ技術の採用を真剣に検討中だ。同社最高技術責任者(CTO)のPat Gelsingerが、サンフランシスコで開催中のIntel Developer Forumで明らかにした。同社では、こうした技術によって、消費電力をそれほど増やさずにチップの性能向上が実現できると期待を寄せている。
設定変更可能なプロセッサとは、作業負荷の変化に応じて、チップのさまざまな部分やパイプラインを起動し、たとえば大容量のグラフィック画像をレンダリングしたり、データベースを走らせたりするタスクを処理するもの。チップメーカーのXilinxは、このアプローチを支持する代表的な企業だ。また、Sun MicrosystemsのThroughput Computing戦略でも、こうした作業負荷に適用可能なプロセッシング技術が中核に据えられている。
チップが負荷に応じて設定を変えられるようになると、その動作速度をさらに高速化できる。今後発生しそうなタスクを予測する必要が減るため、余計な電力消費も少なくなり、そして一部の重要な計算をもっとゆっくり処理できるようになると、Gelsingerは説明した。
Intelはすでに、ネットワーク用プロセッサでこうした適応型の技術を採用した研究の結果を発表している。この結果によると、中間ステップの数が減るため、ある種のタスクは非常に高速に処理されるという。
Gelsingerは、これまでに適応型の技術を研究した論文や企業から「借用できるアイデアは数多くある」と語った。
負荷に適応できるチップの研究は、2000年代初めに始まった、マイクロプロセッサの設計に関する大幅な見直しのなかで、注目を集めるようになった。チップ設計者は長年、クロックスピードの向上と、トランジスタの追加によって、プロセッサの性能を向上させてきた。しかし、こうしたテクニックの採用で、同時にプロセッサの稼働に必要な電力消費量も増大してしまった。現在の90ナノメートルチップでは消費電力の約20〜40%が無駄になっているとGelsingerは指摘したが、この主張は複数の企業の調査報告でも裏付けられている。
余分な電力の消費は、コストが高くつくだけでなく、プロセッサの放熱量を増大させることにもなる。熱はコンピュータ内部のパーツにダメージを与えたり、信号を混乱させたりすることから、コンピュータの設計者はマシン内から熱を取り除くために、高価な新パーツを採用せざるを得なくなる。
こうした理由から、今後Intelなどのマイクロプロセッサメーカーは、マルチコアチップやスレッドなどの技術を使って、性能向上を図らなくてはならなくなるだろう。
「消費電力、メモリのレイテンシー、そしてクロック数の遅れが、周波数の伸びにブレーキをかけることになる。これらの要因を取り除くためには、チップの設計に関して大幅にパラダイムを転換させる必要がある」(Gelsinger)
無論こうしたパラダイムシフトが起こるかどうかはわからないが、それとは別にプロセッサのスピードは今後も引き続き高速化していく。IntelのPrescottチップは今年末までに4GHzに達する見込みだ。
ユーザーは、企業も個人も、いまよりもっと高性能なチップを本当に必要としているのだろうか?この問いかけに対して、Gelsingerは「当然だ」と答えた。アナリストをはじめ、いろいろな人間が、これまで常にチップの速度向上に疑問を投げかけてきた。しかし、チップの速度が上がると、それに合わせて、高い処理性能を要求するような新しいアプリケーションが必ず登場している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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