日立の総額1000億円ファイナンス、市場の反応は強弱感対立

 日立製作所が21日に発表した総額1000億円のエクイティファイナンスに関して市場の見方が分かれ、強弱感が対立している。21日引け後の発表を受けて22日の株価は続落となり、24日の終値は658円まで下落した。8月16日の年初来安値627円を意識せざるを得ない株価水準となってきている。

 日立は21日、総額1000億円のユーロ円建て転換社債型新株予約権付き社債(CB)を、特別目的会社のSaman Capital(ケイマン諸島)を割り当て先とする第三者割り当て方式で発行すると発表した。発行日は10月19日で、研究開発や設備投資資金を調達することが目的としている。全体地合いの軟調さもあって需給悪化を懸念した売り物が先行し、株価は続落となった。

 中堅証券の投資情報部では「日立製作所自体の業績は、緩やかながら回復基調にあるものの、ハイテク株を中心に全体相場が軟調な展開となっているなかでの1000億円のエクイティファイナンスは、やはり株価にとって大きな重荷となりそうだ。信用の買い残高も2000万株の高水準を継続しており、株価の上昇を妨げる要因となっている」と株価の先行きに懸念を示している。

 一方、CSFB証券では「すでにエクイティファイナンスの可能性に関して肯定も否定もしない姿勢が会社説明会で報告されていたため、市場へのネガティブインパクトは短期的なものに終わる可能性があると」判断。投資判断を「NEUTRAL(中立)」に、ターゲット(目標株価)800円を継続するとしている。

 さらに、日興シティグループ証券は24日付のリポートで「21日に発表した1000億円のユーロ建てCBは収益回復への自信の表れ」と指摘。目標株価840円を打ち出した。同証券が注目しているのは、今回の調達資金の用途が「国際競争力を発揮する公算が大きい成長分野」という点。LCD(液晶表示装置)の新たな合弁事業、外部記憶装置、高機能素材、自動車、ナノテクといった分野へ資金を投入することで、「まずまずのROI(投下資本利益率)が得られる公算が大きい」と指摘している。

 同社が発表した2005年3月期の第1四半期(4〜6月)連結決算(米国基準)では、営業利益が376億8800万円の黒字と、前年同期の337億3300万円の赤字から714億円あまり損益が改善し、黒字転換している。さらに、9月中間期の配当金の増配も発表している。9月中間期の配当は、1株につき前年同期比2.5円増配の5.5円とする方針だ。会社側では、デジタル関連製品の需要拡大を主因に、9月中間期の連結純利益が、前年同期比4.6倍と急伸する見込みなど、業績が回復してきていることを増配の理由としてあげている。

 株価は8月16日の627円の年初来安値から9月14日の713円高値まで13%強上昇したあと現在の調整局面にあるが、下値には断続的に外国人投資家の買いが流入してくる可能性もある。ただ、700円台半ばの株価水準はほぼ上値抵抗ラインとなっており、その水準を超えるためにはかなりの時間とエネルギーが必要となりそうだ。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]