「総務省の情報通信政策の最近の動向」総務省・今川拓郎氏

 前回は経済産業省の情報「産業」政策に焦点を当てた、商務情報政策局情報政策課の村上補佐のインタビューをお送りしたが、今回はその積年のライバルと目されてきた総務省を訪問し、情報「通信」政策について、村上補佐のカウンターパートでもある、総務省情報通信政策局総合政策課課長補佐の今川拓郎氏にインタビューをお願いした。

 今川氏は、情報政策の実務に携わる傍ら、プロフィールにあるように大阪大学で教鞭を執るなど、情報産業・情報経済について学術的な知見も持つことで有名で、総務省の情報通信政策研究所の主任研究官も兼任している。

 総務省は所掌範囲が旧郵政・自治・総務と幅広く、e-Japan関連の事業も多岐に及んでいるが、今回はその中でも、インターネットインフラ整備の今後の方向性、そして地方自治体のIT化の課題についてお話を伺った。

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総務省
情報通信政策局総合政策課課長補佐
情報通信政策研究所主任研究官
今川 拓郎 氏
1988年東京大学教養学部卒業、90年同大学院広域科学専攻修士課程修了、同年郵政省入省。97年ハーバード大学経済学博士。大阪大学大学院助教授等を経て、2003年8月より総務省情報通信政策研究所主任研究官(兼)情報通信政策局総合政策課課長補佐。大阪大学非常勤講師等を兼務。専門は、情報経済学、産業組織論、都市経済学、金融等。静岡県出身。

u-Japanのねらい

--今日はよろしくお願いします。

今川: はい。総務省は所管が広いので、テレコム関係だけで2つも局があるんですね。なので、わりと大きな方向性の話から始めましょう。まず、現在総務省が中長期的な取り組みとしてやっているのが、u-Japanというもので、何でもかんでもu-Japanという訳ではないんですが、政策懇談会を開催して勉強を進めています。

 これは内閣府でやっているe-Japanが2005年までに世界最先端のIT国家を実現する、という目標を持ってやっていますけど、これは当然、2006年以降も世界最先端のIT国家であり続けることが目標だと思いますが、その具体的な姿があまり明らかになっていないと。そういう中で、総務省では、e-Japan戦略で行われている戦略IやII、重点計画、加速パッケージと言った政策群が一通り終了した後、2006年以降について、どのような(IT)国家像を目指しているのかについて議論しようと、勉強を始めたわけです。これは、麻生大臣がユビキタス、u-Japanという言葉を大変気に入っていることもあり「u-Japan」という通称がついてますが、正式には「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」ということで今年の3月から、先生方をお招きして議論を始めて、年末に報告書を取りまとめるというスケジュールで進めています。

(※参考資料:「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」)

 この懇談会の議論のターゲットとしては、2010年を目標にしています。現在、電子タグとか、ユビキタス技術の芽が出てきているところですが、そのような技術が隅々まで行き渡った社会を2010年と規定して、その社会に向けた政策的課題について取り扱っています。IT戦略本部の方でe-Japanと言うことで国家戦略を扱っているわけですが、総務省はネットワーク政策が持ち場なので、その分野において2010年にどのような課題が発生してくるかが中心となってきます。また、IT戦略本部でポストe-Japan、あるいはe-Japan戦略IIIといいますか、2006年以降の話を検討するときに、我々の議論を活かしてもらいたい。そういう思いを持って議論を幅広く進めています。

 ITというのは移り変わりの速い世界ですから、ITの世界で5年後というのは、かなり先の話になりますが、いずれにせよ、この報告書には2010年のネットワーク政策の基本的な事項が盛り込まれると言うことになると思います。

 u-Japanの「u」は当初、これから日本のITの進むべき道はユビキタスだろう、ということで「u」としたのですが、麻生大臣からは、「これはユニバーサルのuでもある」という指摘もあり、ユニバーサル、という視点も重視しています。つまり、少子高齢化社会の到来がすぐそばまで迫っている中で、誰でも使えるネットワークインフラを意識していると言うことです。もう一つの「u」が「ユーザー・オリエンティッド」でして、どうしてもITの社会は技術シーズ先行で、ユーザのニーズとはかけ離れたサービスが登場しても誰も使わない、というパターンが数多く見られるのですが、これはユーザ主導に変えていこうと。これらの3つの「u」が重点領域となってきます。

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