iPodに搭載されるチップを製造するシリコンバレーのPortalPlayerという会社が、ウォールストリートでのデビューを目指している。
PortalPlayer(本社:カリフォルニア州サンタクララ)は先週、株式公開への第一歩となる登録申請書類を米証券取引委員会(SEC)に提出した。同社は、最大7500万ドルを調達したい考えであることを明らかにしている。なお予定売出株数を明らかにしていない。
同社が株式公開にあたって抱える課題の1つは、同社の運命がApple ComputerのiPodデジタル音楽プレイヤーの大きく左右される点だ。PortalPlayerのソフトウェアとチップはアイワ、Philips、Rio、Samsungなどの各社から出ている音楽プレイヤーにも採用されているが、圧倒的多数がiPod向けで昨年の売上の85%がiPod関連となっている。同社は申請書のなかで、積極的に事業の多角化を目指していると述べている。
PortalPlayerは過去3年間連続で赤字を計上しているが、売上が伸び続ける中、同社の損失額は年々減少している。同社では、2001年は190万ドルの売上高から2520万ドルの赤字、2002年は880万ドルの売上高から2250万ドルの赤字、そして昨年は2090万ドルの売上高から800万ドルの赤字を計上している。
PortalPlayerでは、チップを設計するだけで実際の製造は行っていない。製造については、チップ委託生産業者のTaiwan Semiconductor Manufacturing Companyと、PortalPlayerに5.6%出資するLSI Logicが請け負っている。
同社では134人の従業員が働いており、その約半数がインド在住のエンジニアで、残りの大半が同社のサンタクララ本社とワシントン州カークランドのオフィスに分かれている。同社は、2002年8月と2003年1月にレイオフで合わせて60人を解雇し規模を縮小している。2回目のレイオフは、1カ月前に経営陣の1人で同社設立を支援したJohn Mallardの退社を受けて行われた。
しかしそれ以降、PortalPlayerは10人の社員を採用しており、予想成長率に応じて採用を継続していく考えを示している。
そうは言っても、顧客数の少なさから、IntelやTexas Instruments(TI)といったライバルチップメーカーのリソースまで、登録申請書には隠れた危険性が多数列挙されている。
PortalPlayerより規模が小さい、ライバルのSigmaTelは、昨年に株式公開を果たした。SigmaTelは、規模はIntelやTIより小さいものの、売上はPortalPlayerの数倍にのぼり、利益も計上している。にもかかわらず、SigmaTelは株式市場で苦戦している。同社株は一時的には高騰したものの、現在は1月に記録した最高値の半値である16ドル前後で取り引きされている。
PortalPlayerにとっては、市場をリードするAppleのiPodが抱えるマイナス面もリスク要因として考えられる。家電製品市場の陳腐化が急速に進む傾向があること、買い手は新製品に同等もしくは安い価格で高い機能を期待すること、定期利用サービスでレンタルした音楽を競合する携帯端末で再生できるソフトをMicrosoftが出してくれば、Appleは一段と激しい競争に巻き込まれることなど、PortalPlayerでは様々な要因を警戒している。
PortalPlayerはさらに、この申請書類の中で自社製チップの機能にも言及している。これは、Appleにとってチップの供給元を変えずにiPodに搭載可能な新機能の一覧とでもいうべきものだ。PortalPlayerがサポートしているとする技術には、Bluetoothおよびイーサネットを使った接続機能のほか、写真のスライドを作成し、音楽とシンクロさせて再生できる機能も含まれている。
同社チップで最も高機能なPP5020は、カラー液晶ディスプレイならびにテレビやプリンタへの出力、そしてデジタルカメラとのダイレクト接続をサポートしている。同社はビデオ再生をサポートするチップを列挙していないが、これも市場が向かう方向の1つのようだ、との考えを示している。ただし、Appleでは以前に、音楽は何かをしながら楽しめるが、映画を見るには集中力が必要だとし、ポータブルビデオ再生デバイスは大きな市場ではないとの考えを明らかにしていた。
PortalPlayerは、合計8490万ドルの資金を調達しており、約880万ドルの現金残があることを明らかにしている。同社は、「PLAY」のティッカーシンボルででNasdaqに上場したい考えであると述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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