「高層ビル」のような3次元の半導体というアイデアは、1980年代前半に登場し、それ以降少しずつ実現化されてきているものだが、いまこの立体チップの家電製品への採用がひっそりと進み始めている。
Matrix Semiconductorは、何度かの開発の遅れを乗り越え、現在3次元メモリ/データストレージチップを販売している。同社の第1世代チップを採用した家電製品は日本で出荷が開始されており、また同技術の改良版を搭載した製品は、北米でこの秋にも大量出荷が始まると、同社で販売マーケティング部門のバイスプレジデントを務めるDan Steereが語った。同氏は、どの会社がどんな種類の製品に同チップを使用しているのかについては、明らかにしなかった。
Matrixのメモリチップに用いられているアイデアは、「半導体のトランジスタ数は2年ごとに倍増する」というムーアの法則の特性をうまく応用したものだ。
大部分の半導体では、トランジスタ(小型のオン/オフ型スイッチ)は平面上に配置されている。このトランジスタのサイズを縮小することで、1チップあたりのトランジスタ数を増加させることができる。また、トランジスタサイズの縮小はチップの表面積の削減にもつながり、単一のシリコンウェハから取り出せるチップの数が増えることで、チップの製造コスト削減にもなる。
Matrixのメモリチップでは、トランジスタを配置した面を積み重ねることで、チップの表面積削減ならびに単一のウェハから生産できるチップ数を増やすことに成功している。その結果、半導体メーカーは新しい回路パターン書き込み装置への投資を行うことなく、トランジスタの小型化にともなうコスト削減を実現できる。
同社がこのメモリチップ製造に使っているのは、実は古くからある技術である。だが同チップのコストは、今日PDAなどで使われているフラッシュメモリなどよりも安価であると、Steereは説明する。同チップの生産は、Matrixに代わりTaiwan Semiconductor Manufacturing Co.が行っている。
この3次元チップの開発はなかなか思い通りには進まなかった。もともと、Matrixは同チップの出荷を2002年に予定していた。
「ここから学んだ最も大きな教訓は...何か(のサンプル)を1つだけ作り出すのは容易だが、それを何百万個も作ろうと思うと、途端に難しくなるということだ」とSteeleは述べ、さらに「製造プロセスやチップの設計に何度か大きな変更が加えられた」と付け加えた。
Steereは、同社のチップを採用した企業の具体的な名前を明らかにしていない。だが、可能性が高そうなのは日本の任天堂だ。ゲーム業界大手の同社は、2年前Matrixに1500万ドルを投資したが、その際このメモリファーマットが同社のGame Boy Advanceの要求を満たしていること、そして同社が将来このチップを利用したいと考えていることを投資の理由に挙げていた。
なお、任天堂では新しい携帯ゲーム機を、北米では年末商戦に合わせて発売する予定だ。
Steereの話によると、Matrixのチップはまず、ゲームや音楽といった事前に記録済みのコンテンツ保存用に使われることになるという。 これらのコンテンツは、通常のメモリチップの場合と異なり、いったん記録されると消去することができない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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