超小型の燃料電池を開発する米のメーカーが、ノートPCや携帯端末に搭載可能な製品の開発に成功した。
MTI MicroFuel Cellsは米国時間21日、同社の「Mobion」というバッテリのプロトタイプを披露した。この製品は、従来のバッテリよりも長時間稼働でき、また他の燃料電池と比べて簡単に生産できるという。
ダイレクト・メタノールを使った燃料電池は、メタノールを分解して電気をつくる。メタノールは触媒膜と反応し電気を発生するが、この際に副産物として二酸化炭素と水もできる。この技術はコンピュータメーカー各社から注目を集めており、とりわけPDAや携帯電話、ノートPCのメーカーらは、これがリチウムイオンバッテリを補完・代替するものになると期待を寄せている。
MTI Microによると、この技術では水をメタノールタンクに注入する必要がなく、その点が競合他社のものとは異なるという。他の燃料電池のなかには、発電時の化学反応から生じる副産物の水を、再びメタノールに混ぜ合わせるタイプのものもある。
こうした設計上の特徴を持つMobionには、有利な点が2つある。まず、この燃料電池には水をくみ出すポンプが必要ないことから、形状を小型化でき、構造も簡素化が可能。さらに、このバッテリは保持するエネルギーの密度が高い。他の燃料電池では、内部で保持するメタノールの割合が全体の25%ということも多い。メタノールの濃度が高ければ、それだけ機器の駆動時間も長くなる。
しかし、高濃度のメタノールを使うことには別の面で問題がある。米連邦航空局(Federal Aviation Administration)では、旅客機の乗客が、メタノール濃度24%以上の燃料電池を機内持ち込むことを禁止している。MTI Microの最高業務責任者(COO)Alan Soucyによると、同社はこの規制を修正するよう当局に働きかけているという。
現在いくつかの新興企業が、ノートPCや携帯電話、PDAに搭載する燃料電池の開発に取り組んでいる。燃料電池はまず、従来のバッテリを補完する目的で利用されることになるが、将来はそれに取って代わる可能性もある。これは従来のバッテリに比べ、燃料電池のほうが2〜10倍電力が長持ちすると考えられているためだ。
シャープやNECのような日本のメーカーは、これまで最も強力に燃料電池の開発を進めてきている。燃料電池を搭載した第1世代の製品は発売が遅れているものの、なかには来年市場に投入されそうな製品もある。
MTI Microでは、最初のターゲットとして業務用機器の市場を想定しており、たとえばRFIDリーダーのようにコンセントから離れた場所に設置される機器や、軍事目的で使われる機器への搭載を目指している。その後、家電市場に参入する予定だ。
同社は現在DuPontやFlextronicsなどと協力しながら、自社の燃料電池を市場に出そうとしているところだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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