富士通が先月25日に発表したIT基盤TRIOLEのグローバル展開。このグローバル展開のなかでも同社が「戦略的製品として積極的に展開する」(富士通TRIOLE推進室長の三津濱元一氏)としているのが、ネットワークサーバIPCOM Sシリーズだ。
IPCOM Sの「S」は、「Simple & Speedyを意味する」と、同社IPネットワーク事業本部長代理の菊池伸行氏。複雑さの増すITシステムのフロント部分をシンプル化し、ネットワーク導入・構築時のスピードアップが実現できるというものだ。ファイアウォールや帯域制御、ルータなどの機能を統合してワンボックス化したIPCOM Sは、価格が半分、スペースとケーブルの本数が3分の1、設計から導入までの時間が5分の1になるとして、同社が4月に発表したもの。商談中のものも含めると、現在200程度の案件があるという。
富士通TRIOLE推進室長の三津濱元一氏 |
「ネットワークの価格が低下するにつれ、企業の中でもネットワークの重要度が大きくなってきた。だがネットワークの構築は複雑で、個々の機能をうまく組み合わせるには専門知識が必要だ。IPCOM Sは“ユニットバス”のようなもので、これさえあれば建築物の水回り部分をすべてまかなえるのと同じで、ネットワークのすべてをまかなえるというものだ」(三津濱氏)
この「わかりやすさ」を、グローバル展開において積極的にアピールしたい考えのようだ。富士通は海外でサーバ販売実績を有するものの、システム全体を販売するには至っていないのが現状だ。「サーバだけを販売するだけでは意味がなくなってきている。システム全体の価値を提供しなくては」というのが、TRIOLEというIT基盤そのものをグローバル展開するに至った理由のようだ。
富士通に限らず日本のITベンダーは、特に韓国企業などと比べると海外展開に対して消極的だといわれるが、これに対して菊池氏は「(日本市場が大きいため)国内だけでもやっていけるというのが甘えとなっていた」という。ただ、海外ベンダーが日本でも積極的にビジネスを展開していることを考えると、富士通としても海外進出は避けて通れないだろう。
グローバル展開に関して、三津濱氏は「現在サーバを販売しているチャネルをうまく使いつつ、ネットワークの構築ができるパートナーを探していきたい」と述べる。パートナー探しから一歩ずつはじまる富士通のTRIOLEグローバル展開。IBMのオンデマンド戦略やHewlett-Packardのアダプティブエンタープライズ戦略など、すでにグローバルで同様の戦略を打ち出している企業と比べると出遅れた感は否めないが、IPCOM Sという戦略的製品を富士通がいかに海外市場にアピールできるかが今後の行方を左右することになりそうだ。
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