富士通が中期戦略を発表、2006年度には営業利益3000億に

 富士通は都内のホテルで記者会見を開き、2003年度の同社の事業内容の総括ならびに2004年以降の見通しについて説明した。

 同社代表取締役社長の黒川博昭氏は、2003年の総括として「コスト、品質、納期厳守」を軸に事業の見直しを進め、4兆7668億円の売上高、1503億円の営業利益、497億円の純利益を達成したと発表した。同社ではトヨタ自動車のOBを迎え入れ、その生産ノウハウを積極的に取り入れてきたことも功を奏したという。2006年度の同社目標として、営業利益3000億円、純利益で1000億円を目指していくとしている。それを踏まえ、同社は2004年度以降の戦略として「ソフト/サービス」「プラットフォーム」「電子デバイス」の3つの事業に特に注力し、部門ごとの利益率アップで経営体質の強化を図りつつ、RFIDなどの新規分野のほか、芳しくない状況が続く海外への事業展開に再び挑戦していくと説明する。2004年度の目標は連結決算で、売上高4兆9500億円、営業利益2000億円、純利益700億円を目指す。

社内体制が整備されつつあることを報告する富士通 代表取締役社長 黒川博昭氏

 同社では、3つのフォーカスポイントの中でもプラットフォーム事業を特に自社の強みだと考えている。同社はTRIOLE(トリオーレ)というプラットフォーム戦略を進めており、それにより従来まで1からシステム構築を行っていたものを、事前にテンプレートしてソリューションを用意しておくことで、検証にかかる手間を軽減し、結果として信頼性の高いシステムの早期立ち上げが可能になるという。同社では、TRIOLEのさらなる強化のため、Intelアーキテクチャを採用したミッションクリティカル用途向けの基幹IAサーバ「Pleiades(プレアデス)」(コード名)の2005年第1四半期でのリリースを計画している。

 ソフトウェア/サービス事業では、2002年度に8.4%だった利益率が2003年に6.5%と大幅に利益が落ちたことを受け、その原因の一端となったSI事業の再生と、伸びつつあるアウトソーシング事業の拡大、そして競争力をつけるためのコンサルティング部門の強化を事業改善の柱としている。特にSI事業では、商談の際にきっちりと見積もりを提示することと、プロジェクトをリアルタイムで監視することでその遅れによる損失や品質低下をつねに視野に入れ、地道ながら確実に収益を上げていける体制づくりに注力するという。対象となる分野も、既存システムのマイグレーション、電子政府/自治体、ヘルスケアの分野に加え、コンサルティング、RFIDなどのユビキタス分野、そしてSMBと呼ばれる中小企業分野まで、広く対象にしていく。

 だがここ数年の同社の業績からいえば回復基調がみえるものの、その先には厳しい戦いが待っている。世界市場では、サーバ、ソフトウェア、サービスのあらゆる分野でIBMの一人勝ち状態が続いており、日本国内においても当然、富士通が従来より持っているユーザーを切り崩してシェア拡大を狙っているとみられる。それに強敵はIBMだけではない。同社ではコンサルティングやアウトソーシングなどのサービス部門を強化し、サーバやソフトウェア(ミドルウェア含む)の充実でプラットフォーム確立を狙うが、これとてIBMの成功モデルの後追いだ。徹底的なコストカットも利益向上には貢献するが、将来的な戦略としては弱い。何より、人員単価の安い「offshore(海外)」へのアウトソーシングを徹底的に進めているIBMなどに比べれば、競争力の点ではまだまだだ。

 質疑応答では、これらの部分について質問が集中した。まず指摘されるのは、ソフトウェア/サービス部門の利益率があまり高くない点である。例えばIBMでは、特にミドルウェア系の製品を充実させており、自社のプラットフォームが確立されている。しかもコンサルティングサービスで大きく稼ぐという成功モデルを築き上げている。だが富士通のケースではまだこの部分が弱く、高いレベルでのコンサルティングを提供できる人員の育成にまだ時間がかかる。現在は、どちらかといえば案件の数をこなして売上をたてている状態だ。まだ社内体制の整備を優先する部分があるからだと思われるが、近い将来、IBMなどの競合との戦いで苦戦することは必至だ。とはいえ、「IBMのように、製品強化のために買収を繰り返すのは、(われわれがターゲットとする市場では)費用対効果を考えて適切ではない」(黒川氏)という事情もある。いずれにせよ今後は、より高付加価値なサービスを提供できる体制の整備が急務だと思われる。

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