米の映画・音楽業界は、ファイル交換の疑いのあるユーザーを大学ネットワークから排除しやすくする新技術を提供し、ファイル交換ネットワークの利用者との戦いで賭け金を吊り上げようとしている。
このプロジェクトに詳しい情報筋によると、各映画会社やレコード会社、IT企業らが共同で数カ月前からこのシステムをテストしているという。
Automated Copyright Notice System(ACNS)と呼ばれるこの技術は、PtoPネットワーク上での著作権保護を徹底しやすくするもので、大学やISPではこれを導入することで時間と金銭的コストが節約できるという。ACNSは、レコード会社や映画会社の通告にもとづいて、大学やISPが著作権侵害の疑いのあるユーザーに対し、インターネットの利用を自動的に制限したり遮断できるようにするもの。ACNSを利用する大学では、たとえば著作権を侵害した学生に直ちにメールで通告を行い、その学生がファイルを削除するまではネットワークを利用できないようにするといったことが可能だ。
ACNSと全く同じ仕組みではないが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ではこれと同様のシステムを19日(米国時間)から稼働させる予定だ。
同技術の概要書によると、「ACNSは利用料無料のオープンソースシステムで、大学やISPなど大量の著作権違反通知を処理する人々なら誰でも、ネットワーク上でこれを実装し、通知への対応の効率を上げ、コストを削減できる」という。
大学キャンパスはPtoPネットワークを利用した違法ファイル交換の中心地となっている。これは、学生が大学のネットワークを通じ、高速インターネット接続やLAN接続を利用できることが多いためだ。映画・音楽業界は、こうした著作権侵害により数十億ドルもの損失を被っているとして、大学と協力しながらファイル交換の防止に力を入れている。ACNSもその一環で、大学やISPが著作権保有者から寄せられる何千ものコンテンツ削除要求を処理するための負荷を、少しでも減らすことを目的としたものだ。
学生のデジタル窃盗行為に対する訴訟では大学側にも責任が生じる可能性があるため、各大学にもこうした技術的な解決策に対して協力するべき理由がある。
全米映画協会(MPAA)は、違法コピー抑制のカギとなる大学の支持を集めようと、現在でも働きかけを行っていると、MPAAのデジタル戦略ディレクターMatthew Grossmanは述べている。「ACNSを利用して各大学が著作権に関する方針をきちんと実行できるとすれば、われわれはこの技術を全面的に支持する」(Grossman)
ACNSは、Vivendi Universal EntertainmentとUniversal Music Groupが共同開発したもので、PtoPネットワークを利用した違法なファイル交換に対する技術的な解決策の求めに応えるものだ。VivendiとUniversalは現在も大学やISP、IT企業などと協議を続けており、ACNSを実験プログラムとして提供したい考えだ。また両社はこの技術に関する特許も申請している。
デジタルタグを利用するACNSの仕組みは、映画会社やレコード会社が送ってきた違法なファイル交換に関するレポートを利用し、大学側に著作権の侵害があったことを知らせるというもので、現行の報告のやり方を強化するために、ソフトウェアタグを利用し、一部の段階を自動化している。
Universal Music Groupを含む、映画・レコード会社のなかには、著作権侵害報告の末尾に付したタグをXMLで標準化し始めたところもある。これにより、データをさまざまな状況でシームレスに用いることが可能となる。
このデジタルタグには、著作権で保護された素材の名前や著作権所有者の氏名、日付けやタイムスタンプ、それに著作権を侵害した者が使用したIPアドレスなどの情報が含まれている。同システムを利用する大学やISPでは、このタグを受け取ると内部の通告プロセスが開始されるようになっている。
現在、大学が著作権侵害通告に対して行動を起こすまでには、通常、数日から数週間かかっている。まず通告を受け取ったIT管理者は、該当するIPアドレスを使って、違法なファイル交換を行った学生の身元を割り出さなくてはならない。その後、IT管理者はその学生が住む寮のアドバイザーに報告を行う。報告を受けたアドバイザーは、その学生の行為を学生課に報告。これを受けて学部長が学生に通告を行い、場合によってはその学生がインターネットを利用できないようにすることもあり得る。
ACNSは、このような通告を行う電子メールを送信し、その学生のインターネットや電子メールへの接続はそのままにしながら、PtoPネットワークへのアクセスだけを自動的に遮断することも可能だ。学校側のポリシーにもよるが、違反が初めての場合には学生を30分間「ペナルティーボックス」に隔離してアクセスを遮断し、また2回目以降には、PtoPへのアクセス権を1週間はく奪する、などといった設定が行える。
ACNSでは、各違法行為ごとに、通告を受けた人や対応状況などを含むレポートが作成され、またこうした活動を監視する部署ではログが生成される。
インターネットの消費者権利保護グループElectronic Frontier Foundationの弁護士Fred von Lohmannは、ACNSのコンセプトを興味深いとしながらも、これで大学キャンパスにおける著作権侵害問題を解決できるかどうかは疑わしいと述べている。同氏の予想では、学生が検出を避けるためにワイヤレス端末を用いるなどの抜け道を思いつくことになるという。また、著作権所有者にとっては、各大学のキャンパス毎にライセンス契約を結んで、自社のコンテンツを提供するほうが、賢明な解決策だと同氏は付け加えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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