次に、OpenOffice.org日本ユーザー会の可知豊氏が統合アプリケーションソフトOpenOffice.orgを紹介した。OpenOffice.orgは、マルチプラットフォーム、マルチランゲージに対応している。公式に対応している言語は6言語だが、プロジェクトとしては26言語で何らかの活動が行われている。また、アイヌ語など非公式に対応している言語が76言語にものぼる。
可知氏は、オープンソースソフトウェアにおける水平性というプラットフォームを問わない開発展開について言及する。
一方で、オープンソースコミュニティとしての水平性については前向きな評価を下す。国際化という視点からみれば、本家開発コミュニティへの働きかけが活発だ。反対に地域対応という視点からみれば、ローカルコミュニティ自体が相互に影響しあって活発な活動を行っている。可知氏は「日本語版にバグがあったとき、本家の対応が遅れたため、日本のコミュニティがビルドした修正版を本家から正式版としてリリースしてもらおうという活動があった」と具体的な例を示した。
Windows環境でも利用できるLinux「KNOPPIX」
産業技術総合研究所の須崎有康氏は、CD-ROMブートのLinuxディストリビューションであるKNOPPIXを紹介した。KNOPPIXはハードディスクを利用しないので、Windowsがインストールされている環境でも簡単にLinux環境を構築することができる。元々はドイツ人のKlaus Knopper氏がDebianをベースに開発したもので、産業技術総合研究所が2002年夏に日本語化した。
産業技術総合研究所の須崎有康氏 |
KNOPPIXの特徴は、CDブート時にハードウェアの認識・設定を自動的に実行するオートコンフィグだ。また、CD-ROMに収録されている各種アプリケーションがブート時に設定済になっているため、クリック1つで利用できる。
須崎氏は、日本語化にあたっての苦労点を語る。まず日本語フォントだが、開発当初はLinuxで標準的に使われていた東風フォントを使っていた。理由はフリーで使える日本語フォントということだったのだが、その後、日立プリンティングソリューションズとの契約問題が発生し、利用できなくなった。現在は東風フォントの代用品を利用しているが、「もっと綺麗なフォントを使いたい」というのが正直な感想のようだ。
印刷機能においても日本語フォント問題を引きずっている。また、各アプリケーションで印刷インターフェースが統一されておらず、ドライバソフトも個々に開発されており安定性がまちまちだったという。
さらにライセンス問題という障壁も存在する。産業技術総合研究所が日本語化したKNOPPIXには、Javaが搭載されていない。その理由は、Javaがライセンスによって再配布不可となっていることが挙げられる。Javaのインストーラを用意してこの問題に対応している。同様の理由でいくつかのアプリケーションがオリジナル版から削除されているそうだ。
最後に須崎氏は、配布方法に関する苦労話をする。1枚のCD-ROMに収まるように圧縮されているとはいえ、700MBものデータをFTPでダウンロードするのは大変だ。また、ダウンロードしたとしても、CD-ROMに焼き付ける必要がある。このようにユーザにとって面倒なプロセスがあるため、どうしても雑誌などによるCD-ROM配布という形態をとるしかないそうだ。
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