脚光を浴びる次世代フレームワーク、サービス指向アーキテクチャ - (page 2)

Martin LaMonica(CNET News.com)2004年04月12日 10時00分

Webサービスが後押し

 SOAが新たな命を得た背景には、Webサービスの普及という大きな技術面の変化があったと、専門家らは指摘する。WebサービスとはXMLプロトコルを集めたもので、これにより異種システム間のデータ交換プロセスは劇的に簡素化される。Webサービスベースのサーバソフトウェアは、従来のミドルウェアシステムと同様、企業システムにセキュリティや通信の信頼性といった技術基盤を提供している。

 複雑なプログラミングコードに情報を包む従来のミドルウェアとは異なり、Webサービスでは、アプリケーションはXML形式の文書の送信を軸に設計されている。発注書のようなビジネスデータのやりとりがWebサービスで簡素化されれば、議論の焦点を技術的な事柄からビジネスに関する事柄へと移せるようになる。

 「ミドルウェアは途方もなくマニアックだった」と新興のWebサービス会社、Cape Clear Softwareの最高経営責任者(CEO)Annrai O'Tooleは言う。「(Webサービスが利用できるようになって)初めてビジネスのコンセプトを議論し、それを技術に対応づけることが可能になった」(O'Toole)

 Webサービス用の各アプリケーションは、顧客への発注書送付に関する全手順など、あらゆるビジネスワークフローを扱っている。難解な専門的プログラミングの代わりに、XML文書とビジネスプロセスを中心的な設計エレメントとして利用すれば、ビジネス側の人間が何を必要としているのかを社内の開発者に伝えやすくなる。

 SOAと従来のミドルウェアの相違点としてもう1つ重要なのは、Webサービスで利用できる通信方法だ。統合ソフトウェアの大半は、アプリケーション同士を常時物理的に接続するよう設計されているが、SOAとWebサービスなら、企業は必要なときにだけアプリケーションを接続すればよい。

 アプリケーションが必要に応じて自動的にリンクするという、この「ルース・カップリング」(疎結合)のコンセプトのおかげで、企業のデータセンターはさまざまなビジネスプロセスで統合コードを再利用し、柔軟性を大幅に高めることが可能になる。開発者は、サプライチェーンと販売支援アプリケーションをつなぐための統合サービスを構築し、それをサプライチェーンシステムからウェブポータルアプリケーションへのデータフィードに再利用できるようになる。従来のミドルウェアでは、新しい接続を作るたびに相当量のコーディングが必要だったとアナリストらは述べている。

 WebサービスによってSOAへの関心が新たに高まっていることから、自らを「SOAプロバイダ」としてアピールしたい技術プロバイダが、この分野に急激に関心を寄せはじめている。ところが現実には、SOA向けをうたう最新製品--簡単にいうと、最新世代のミドルウェアおよび開発ツール--もまだ比較的完成度が低い。しかし大手メーカー各社の仕掛けるマーケティングにより、SOAの知名度は徐々に高まっている、とリサーチ会社ZapThinkのアナリストRon Schmelzerは述べている。

 「まだ話ばかりで中身に乏しいが、そんなことはどうでもよい」とSchmelzerは述べ、SOA導入を検討中の企業が増えていると報告している。「(企業の)開発者たちは、『緩く結合されたシステムと標準ベースのコンピューティングというアイディアを私は気に入っている。このアイデアを検討している人々は大勢いる』と話している」(Schmelzer)

 SOAは次世代のコンセプトであるため、すでにミドルウェアや開発ツールを販売している各メーカーは、新しいインフラ用ソフトウェアの販売競争において既存顧客を守る必要がある。IBMやSun Microsystems、Microsoft、BEA、Oracleなどがこうしたメーカーにあたる。高額なインフラ用ソフトウェア製品スイートの販売を狙うベンダー各社にとって、SOA用ソフトウェアや開発ツールのサプライヤとしての足がかりを得ることは、戦略的に重要だ。現状では、顧客企業の多くはIBMやSunなどから出ているJavaベースのツールやサーバソフトウェアか、もしくはMicrosoftのVisual StudioツールとWindowsを利用している。

 SOA用のインフラソフトウェアのプロバイダとして顧客に選ばれたベンダーが、「その顧客に大きな影響力を持つことになる」とGartnerのアナリスト、Joanne Correiaは述べている。

 Windowsの次期バージョン(開発コード名「Longhorn」)には、IndigoというWebサービスをベースにしたコネクティビティソフトが含まれる予定だ。BEAは5月に「Project Sierra」プログラムをスタートさせ、SOAを構築に自社のJavaツールやサーバソフトウェアを利用するよう顧客に勧めていく。IBMも各種の開発ツールを用意しており、また自ら「Center of Excellence」と呼ぶ中核的研究拠点を設けて、SOAやWebサービスの促進にあたっている。

 しかし、Webサービスへのシフトで、小規模なソフトウェア企業、とくにメインフレームやJava、.NETなどの複数のプログラミング環境にまたがる統合ツールを販売している企業にも、新たなチャンスが生まれていると、Schmelzerは指摘する。同氏は比較的小規模なSOAインフラソフトウェアおよびツールメーカーとして、Sonic SoftwareSystinetFiorano、Ionaの名を挙げている。また、Forrester Researchは最近のレポートのなかで、SOAの分野でXMLセキュリティからビジネスプロセス管理ツールまで、さまざまなニッチ製品を提供している多数の小規模技術プロバイダにチャンスがあると述べている。

 Gartnerでは、WebサービスやSOAの採用によって、アプリケーションのリリースとカスタマイズのコストが大幅に削減されると予想している。現在、ソフトウェアライセンス1ドルに対し、ソフトウェアの実装にかかるコストは約5〜6ドルとなっている。これに対し、Webサービスの進歩により、2008年までには、アプリケーションの導入コストは、ライセンス1ドルあたり2〜2.5ドルの範囲にまで減少するだろうと、Gartnerは述べている。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]