昨年12月に米国でIPOの申請を済ませ、株式公開目前となっているsalesforce.com。CRMアプリケーションをASPモデルで提供して成功を収めている企業だ。その日本法人であるセールスフォース・ドットコムに4月1日、新社長が就任した。日本IBMで製品事業部長、理事、情報サービス産業事業部長などを歴任し、その後ソフトバンク・コマースで代表取締役を務めた宇陀栄次氏だ。同氏は3月25日に米salesforce.comのシニアバイスプレジデントにも就任している。
セールスフォース・ドットコムの新社長 宇陀栄次氏 |
現在salesforce.comの売上は、従業員200名以下の小規模企業からのものが40%、従業員200人以上で売上高5億ドルまでの中規模企業からのものが30%と、顧客の中心は中小企業となっているが、「現在の日本での中心顧客層は主に中規模企業」(宇陀氏)だという。顧客層を広げることは、同社にとってのミッションでもある。ここで力を発揮できるのが宇陀氏だ。同氏は、IBM時代にパートナーとのアライアンス戦略を始めた人物ともされており、今後数々のアライアンスで顧客層を広げたい考えだ。「ASPというのは、大規模企業から小規模企業まで、あらゆる企業が利用できるもの。チャンスは大きい」(宇陀氏)
アライアンスは、自社ブランドを浸透させるためにも役に立つと宇陀氏は語る。「ASPは、ひとつひとつの商品が安価なため、軍隊のような突撃タイプの営業力で売ってもなかなかメリットが出ない」と同氏は説明し、パートナーにとっても利益が出るようなビジネスモデルを提示することで売上を伸ばしたいという。
そのなかでもセールスフォース・ドットコムでは、昨年末にバージョン2.0が発表されたsforceというアプリケーションプラットフォームを積極的に展開する考えのようだ。sforceを利用することで、顧客はsalesforce.comのカスタマイズやインテグレーション、拡張ができ、同社のサーバ上でCRM以外の新たなアプリケーションも開発することができるという。
宇陀氏は、同社の掲げる「Success, Not Software」というキャッチコピーについて、「わが社が提供するものは、ソフトウェアではなく顧客の成功だ」という意味があると説明する。サービス内容や機能を強調するのではなく、顧客にとってのメリットや成功事例をアピールし、そのうえで顧客に興味を持ってもらいたいと宇陀氏。今後は積極的に顧客の成功事例を発表していきたいとしている。
現在日本法人では約40名の人員を抱えているという。宇陀氏は「人数の多さで勝負するより、質の高い会社にしていきたい。今後人員を増やすとすれば、顧客本位でコンサルティングができる人物やパートナーの立場に立てる人、提携の仕組みが作れる人など、分野ごとのエキスパートを迎え入れたい」と語る。
宇陀氏は自身の強みとして、ITとネットワークの両方に熟知していることをあげる。「通常IT系の人間はネットワークが何かをよくわかっていない。逆に通信系の人間はITのことがよく理解できていないものだ。ITとネットワークが融合されつつあるいま、IT系も通信系も経験した私がそのハブ機能を果たせるようになりたい」と宇陀氏はいう。ASPはネットワークの存在が前提となって提供されるITサービス。宇陀氏の経験が十分に生かせる職場であることは間違いなさそうだ。
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