Salesforce.comは、顧客サービスおよび販売支援用のソフトウェアをウェブで提供しているが、その同社は米国時間25日、これまでで最大となる2件の契約を獲得したと発表した。この2つの大口契約が、同社のIPO(株式公開)を後押しすることになりそうだ。
同社はニューヨークで開催した顧客向けのイベントで、複数年にわたってアプリケーションサービスを提供するという、この契約についての発表を行った。このイベントは、同社のIPOに対する機関投資家の関心の度合いを探ることを目的とした、1週間にも及ぶ「ロードショー」だ。
これらの発表は、SalesforceがIPOを申請した書類のなかで強調しているリスク要素の1つ、つまり顧客ベースの大半が小規模な企業である、という点に関連する。IPO申請書によれば、これらの顧客との契約は長続きしない傾向があり、Salesforce.comの安定にとって、大企業と長期契約を結ぶことは重要だという。
契約者の漸減という問題は、サービスとしてソフトウェアを提供している、Salesforceやその他の企業が直面するジレンマを浮き彫りにしている。契約型モデルは顧客の人気を集めているが、その理由はコストが安く、素早く導入でき、またライセンスの購入に大金をはたきながら期待に沿わない場合がある従来の業務用ソフトウェアに比べて、リスクが少ないからだ。その一方、契約の手続きも簡単なことから、利用者は容易に契約を解除したり、他のサービスに移ってしまうという面もある。また、事前に大きな投資が必要ない顧客を囲い込むことも難しい。
SalesforceのIPO申請書によると、2004年会計年度の第3四半期まで同社が計上した売上高の約40%は、社員200人以下の小規模企業が占めるという。Salesforceが創業5年という、比較的若い企業であるため、大口顧客を引きつけるのは難しいかもしれないと、同社は申請書で述べている。
Salesforceが、Automatic Data Processing(ADP)およびSunTrust Banksと新たに結んだ契約では、それぞれ2000人以上の社員に、同社のカスタマーサービスならびに販売オートメーション用アプリケーションが提供されることになる。両契約の金銭面に関する詳細は明らかにされなかった。
Salesforce最高経営責任者(CEO)のMarc Benioffによれば、今回の契約によって、企業向けアプリケーションをウェブを通じて月ぎめ料金で提供するという、誕生から間もない市場が大企業に認知されたことになるという。「非常に大規模な企業が、Salesforceのソフトウェアを標準に据えるのは、これが初めてのことだ」(Benioff)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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