パワードコムとフュージョン・コミュニケーションズは3月25日、電話事業の統合に関して最終合意に達したと発表した。パワードコムが電話事業部門を切り出し、フュージョンに合併させる。また、フュージョンは合併に際して新株を発行し、パワードコムに交付する。これによりパワードコムがフュージョンの筆頭株主となる。
パワードコムとフュージョンは2003年11月から統合検討委員会を設置し、統合に関して検討を行ってきた。その後、2004年2月27日には基本合意に達したと発表。持ち株比率などについて詳細を詰めていた。
パワードコムの白石智氏(左)とフュージョン・コミュニケーションズの角田忠久氏 |
統合後の会社名はフュージョン・コミュニケーションズのままで、引き続き角田忠久氏が代表取締役社長を務める。統合期日は7月1日。パワードコムからは電話事業関連部署の人員約150名がフュージョンに出向する予定だ。パワードコムが運営する電話事業の「東京電話」に関しては、当面サービスを継続する。ただし5年以内にはフュージョンに統合していく予定という。
両社が事業統合を進めた背景には、固定電話のトラフィック減によってNTT東西のアクセスチャージが値上がりしたことが挙げられる。アクセスチャージとは、通信事業者がNTTなどの通信網を利用する際に支払う料金のこと。これにより、両社の電話事業の収益が圧迫されていた。
統合後も当面は中継電話サービスが売上の7〜8割を占める見込みだが、電話市場がIP電話に移行していることから、今後はIP電話サービスにリソースを注ぐ方針だ。光ファイバ上で信頼性の高いIP電話サービスを提供することで、NTTの基本料金を不要にする狙い。これはKDDIが2003年10月に提供を開始した「KDDI光プラス」と同じ発想だ。
「中継電話サービスの場合、発着ともにアクセスチャージを支払う必要がある。しかし、IP電話であれば、インターネットを利用した発信になるためアクセスチャージがかからない。しかも着信時にはNTTなどからアクセスチャージを受け取ることができる。この点は大きい」(角田氏)。ただし、ブロードバンドの加入者回線から音声をIP化して発信する個人向けIP電話はYahoo! BBが強いと角田氏は話し、法人向けに注力するとした。
2006年度の株式公開を目指す
両社を合わせたマイライン登録数のシェアは、市内が4.9%、県外市内が6.4%、県外が8.1%、国際が7.5%となり、いずれも業界4位となる。統合後の業績は、2004年度の売上高が約780億円、営業損失が約27億円、経常損失が約35億円となる見込み。これは、統合が年度途中に行われるうえに統合にかかる一時費用が発生するため。2005年度には黒字転換し、売上高が約995億円、営業利益が約30億円、経常利益が約21億円になると予想している。角田氏は「2006年度には株式公開したい」と意気込んだ。
なお、パワードコムの電話事業部門の業績は2003年上期が売上高226億800万円、営業損失が11億1200万円。フュージョンの2003年上期の業績は、売上高が148億8100万円、営業損失が3億3000万円、経常損失が7億400万円、純損失が7億1200万円となっている。
フュージョンは、合併に際して新たに10万4027株を発行し、パワードコムに割り当てる。パワードコムの持ち株比率がこれにより54.27%となり、日商エレクトロニクスを抜いて筆頭株主となる。
パワードコムは3月22日に個人向けISP事業をドリーム・トレイン・インターネットに統合すると発表したばかり。今後は法人向けのネットワークサービスなどに注力する方針だとパワードコム代表取締役社長の白石智氏は説明している。
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