「半導体市場は2006年にピークアウトを迎えると言われるが、(2001年の)バブル崩壊ほど大きな谷にはならないだろう」---電子情報技術産業協会(JEITA)の半導体幹部会委員長を務めるNECエレクトロニクス代表取締役社長の戸坂馨氏は3月22日、国内の半導体産業の今後についてこのように予測した。
現在の半導体市場の牽引役はPCからデジタルカメラなどの民生機器へとシフトしている。1996年と2002年の金額ベースの製品構成を比べると、1996年はPCやサーバなどのコンピュータ部門が38%、カメラやオーディオなどの民生部門が31%を占めていたのに対し、2002年ではコンピュータ部門が20%、民生部門が42%になっている。
JEITA半導体幹部会委員長を務めるNECエレクトロニクスの戸坂馨氏 |
民生部門の中でも伸びが大きいのがデジタルテレビやDVD機器、デジタルカメラだ。なかでもデジタルテレビの伸びは著しく、2003年から2006年にかけて生産金額ベースで38.1%の伸びを示すとJEITAでは予測する。これは2004年にアテネオリンピックが開催されることが影響しているが、戸坂氏は「オリンピックが終わった後も市場が伸びる傾向は変わらず、1〜2年は続くのではないか」と見ている。
半導体市場の好況を受けて各社は生産の増強を進めており、2005年後半にはそれぞれの生産体制が整うと見られる。このことから2006年には供給過多になり、シリコンサイクルの谷を迎えるのではないかと見る関係者は多い。戸坂氏はこの点について、「バブル崩壊時の印象がいまだに強く、慎重な投資を行っている企業が多い。2001年の時ほど大きな波にはならないのではないか」と分析する。さらに、半導体の需要を牽引する製品群が多様化していることから、以前に比べて1つの産業が半導体市場全体に与える影響は小さいとも予測した。
次の技術の壁は45nmへの移行
戸坂氏は、産学官が共同で進めている半導体開発コンソーシアムの現状についても紹介した。現在日本で進められている主なプロジェクトは先端要素技術開発を行うMIRAI、次世代半導体研究開発を行うあすか、設計プロセスの検証・試作を行うAS☆PLAの3つ。なかでもAS☆PLAは90nmノードの標準製造技術を立ち上げるなど、現在国内ベンダーが進めている90nmノード、300mmウエハラインの導入に大きく貢献しているという。
あすかは65nmノードの開発について研究を行っており、実用化が見えてきているという。ただし45nmノードについては「新しい材料の検討も含めて、新たな技術が必要になっている」と戸坂氏は話し、ここに技術の壁が存在しているとした。45nmノードについては、MIRAIが取り組みを行っている段階だ。
あすかとMIRAIはどちらも基盤技術の開発を行っているが、戸坂氏は「ターゲットが明確に違っており、研究内容の重複は少ない」として、2つのプロジェクトの統合については否定。研究データに関する情報交換など、連携を進めていくべきだとした。
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