「携帯電話の進化が半導体ビジネスを牽引する」---ルネサスの長澤会長

 「皆さんが家庭で利用されている電子デバイスのおよそ4台のうち1台には、ルネサスのマイコンが入っている計算になります」--- 千葉の幕張メッセで開催されているCEATECで行なわれた講演で、ルネサス テクノロジの会長兼CEOを務める長澤紘一氏はこう語り、ルネサスの経営方針を説明した。

 2003年4月1日に日立製作所の半導体部門と三菱電機の半導体部門を統合して資本金500億円で設立したルネサスは、開発、設計、製造、販売、応用技術のサポートまでカバーする半導体製造企業。現在の社員数2万7000人で、今年度の売り上げを9000億円以上と見込んでいるとし、現時点の業績は予定より若干上向きに推移している。

 ルネサスの業績が好調な背景には、世界的に見て日本が先行する新しいアプリケーションやデバイスの登場がある。「今年の半導体市場の前年比成長率の予測がアジア全体で数%、また欧米での伸びがほとんど期待されていない一方、(カメラ付き携帯電話や液晶テレビ、PDP、デジタル家電など新しいデバイスが半導体市場を牽引する)日本では、10%以上の伸びと予測されている」と長澤氏。

ルネサス テクノロジ 会長兼CEO 長澤紘一氏

 長澤氏によれば、ルネサスはユビキタス社会の実現につながる市場をターゲットとしているという。ルネサスは汎用製品事業、カスタム製品事業、システムソリューション事業を事業の3つの柱としているが、特に最後のシステムソリューション事業については、ユビキタス化の象徴的な存在である自動車、PC/AV、モバイル分野に重点を置いているとした。

 さらに長澤氏は半導体ビジネスを取り巻く環境の変化についても説明。「これまでの半導体市場がビジネスフォーカス、つまり省人化や業務効率の向上などを目的とした製品開発が先にあって、そこで求められるスペックを実現することを目標としていた。しかしこれからはヒューマンフォーカス、つまり、われわれ人間生活の、あるいは個人の安心、快適、エンターテインメント性や夢、また人の不注意を助けてくれるような、人に優しく、人間の領域を拡げるシステムが求められるようになる」とし、半導体技術もこうした市場で必要とされるようになるだろうとするルネサスの時代認識を説明した。

 ヒューマンフォーカス時代においては、ネットワークやシステムのユビキタス化が指向されるが、そこで実現するユビキタス社会では、(1)セキュリティ技術、(2)小型・低消費電力技術、(3)ネットワーク技術、(4)インターフェース技術が総合的に機器に求められるようになる。ルネサスはこうしたニーズに応える様々な技術を持っており、またトータルにソリューションできる ITDM(Integrated Technology & Device Manufacturer)としての強みがあるとした。

 またヒューマンフォーカス時代におけるアプリケーションには、携帯電話に代表されるように、日本的な感性が強く求められているとしている。「1年前に古いご飯が急に美味しくなったことを女房に尋ねたら、新しく購入した炊飯器に普通や固め、柔らかいやモチモチなどの選択肢があって、今日はモチモチで炊いた、と言われた」というエピソードを紹介し、開発者の物に対する日本的なこだわりが、半導体をはじめとした技術の発展にも貢献しているという見解を述べている。

 さらに同氏は今回の講演のテーマで、アプリケーション、コンテンツを含めた将来ニーズを想定した、ロードマップ展開とソリューション提供を意味する "BeyondSolution" について、ルネサスのモバイル分野での取り組みを例にとり説明した。携帯電話が電話機能以外のアプリケーションの充実によって、もはや電話というよりは様々な機能を統合したネットワーク端末になりつつあるため、電話という概念をブレイクスルーする設計思想の転換を求められている。

 同氏は、ルネサスがこうした課題に対し、通話処理や他の様々な機能を現在受け持っているベースバンドチップからアプリケーション処理を分離し、アプリケーション処理専用チップとしてSH-Mobileを追加採用する設計方針の転換を説明した。こうすることで高度化するアプリケーションに対応でき、携帯電話メーカーでSH-Mobileの採用が進んでいるとも述べた。

 また今後こうした方針を推し進めるべく、パートナー各社とのコラボレーションの推進や、開発期間短縮のための相互協力、製品やサービス開発に向けてのシナジー創出や携帯電話のトータルソリューション創出を目的として、今回設立されたSH-Mobileコンソーシアムを紹介し、各社との協力の中でユビキタス社会実現に向けたソリューションの提供を行っていくことを明らかにしている。

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