Microsoftは、新たなライバル攻撃を展開し、異なるアプリケーションの連携に関しては、IBMやLinuxよりも同社のほうが優れていると主張している。
Microsoftはこれまで、自社が資金提供した一連の調査や、「Get the Facts(事実を知ろう)」と題したキャンペーンに基づく広告を通じて、Microsoft製品の方がLinuxなどのオープンソースソフトウェアよりTCO(全体的な所有コスト)が少なくて済むと主張してきた。その同社が、今度は相互運用性の問題に論点を移そうとしている。
Get the Facts戦略の最初のターゲットはLinuxだったが、相互運用性の議論ではIBMも攻撃の的になっている。Microsoftのプラットフォーム戦略ゼネラルマネージャー、Martin Taylorは3日(米国時間)のインタビューで、Microsoftが資金提供して実施されたJupiter Researchによる調査の結果、IT顧客がMicrosoftをIBMよりも高く評価していることが示されたことを嬉しく思うと語った。
Taylorは、Microsoftの焦点がTCOから相互運用性に移ったと述べた。また、同社の次のステージでは信頼性に焦点を合わせ、現在の課題であるセキュリティも引き続き注力していくと語り、こうした優先順位は顧客からの問い合わせに基づいたものだ、と説明した。
インターネットやWebサービス、拡張マークアップ言語(XML)といった技術がビジネス取引に浸透するのにともない、相互運用性は実に深刻な課題となっている。
大手IT企業は現在、さまざまなソフトウェアアプリケーションが互いに連動し、ネットワークを介してXMLメッセージを送受信するという未来に向かって進んでいるところだ。たとえば小売会社がクレジットカード決済処理を別の会社に依頼したり、企業が在庫情報や、サプライヤーや卸売り業者からの出荷情報を常にアップデートする、といったことが早晩可能になる。
Taylorは、ライバルをより「現実的な」アプローチで批判するため、一連の調査を率いている。Linuxのオープンソースプログラミング哲学を「パックマンみたいだ」とか、ガンだといってあざけっていた同社のこれまでの戦略は逆効果だった。
Microsoftが資金を提供した第3者による調査は、論争の的となっている。LinuxよりもWindowsのほうが開発コストが低いとするForrester Researchの調査結果をMicrosoftが宣伝したことから、Forrester Researchは方針を改め、調査に資金を提供した企業が調査結果を宣伝に使うことを禁止した。
Jupiterの最新の調査は、年間売上1000万ドル以上の米国企業に務めるIT部門の購買責任者800人を対象に、相互運用性に対する意見を求めたもので、昨年12月に行なわれた。この調査によると、対象者の72%が、相互運用性に関してはMicrosoftを他のどの企業よりも好ましいと評価しているという。
第2位はOracleで、68%が同社の技術を好ましいと評価。IBMは73%で第3位、Sun Microsystemsは57%で第4位だった。Hewlett-Packard(HP)とRed HatなどのLinuxサポーターが第5位に並び、55%が好ましいと評価した。
しかし、調査会社RedMonkのアナリストStephen O'Gradyは、この調査の対象となった人々のうち、何人が相互運用性を必要としているのかという点に関して、疑問を呈している。回答者のうち、複数の企業の技術が混在するIT環境にいるのはわずか36%で、また37%はMicrosoft製品だけを使用していると答えた。
「均一的な環境にいる人々(1社だけの技術を利用している顧客)には、ここ何カ月も出会っていない」(O'Grady)
IBMはこの調査結果を批判している。「メーカーからの資金提供を受け、問題のある基準に基づいた調査報告には、IT統合に関する非常に重要な議論への貢献はほとんど見られない」(IBM広報Steve Eisenstadt)
Red Hat広報担当のLeigh DayはLinuxを擁護し、「Red Hat Enterprise Linuxは7種のプラットフォームで利用できることから、異なるメーカーの技術が混在する環境に、容易に適応できる」と述べている。Red HatのLinuxやNovellのSuSE Linuxは、IntelのXeonおよびItaniumプロセッサのほか、Advanced Micro DevicesのOpteronと、IBMのプロプライエタリなサーバ製品4種で利用可能だ。
Jupiterの調査では、アプリケーション同士をリンクさせる数々の技術の中で、Webサービスが最も好まれていた。Webサービスは、IBMとMicrosoftが先駆けとなり、現在では多数の企業から支持を受けて、標準化が進められている技術だ。調査結果では、55%がWebサービス標準を好ましいと評価している。
XMLやWebサービス技術の多くは、相互運用性の実現が容易なオープンな標準に基づいている。だがXMLを利用するからといって、必ずしもオープン性が保証されるわけではない。
相互運用性に関するMicrosoftの主張の多くは、XMLに依拠しているが、一方で同社はXML関連の複数の技術を独占しようとしている。同社はXML関連で複数の特許を申請しているが、この特許が競合するアプリケーションの締め出しに利用されるおそれがあるとアナリストらは述べている。しかし、Microsoftが最近、Office 2003ソフトウェアで使用されているプロプライエタリなXMLスキーマを無料提供したように、ロイヤリティ無料でXML関連の革新的技術を提供することもありえる。
Linux技術との相互運用性については、Microsoftは関心がないようだ。Taylorは1月に開催された「LinuxWorld Conference and Expo」で、LinuxがWindowsシステムのファイルを正しく共有できるようにすることは、オープンソースコミュニティの責任だと述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」