Microsoftの当面の敵はLinuxのはずだが、このライバルに対する同社の態度が、明らかにこれを許容する方向へと転換している。デンマークのコペンハーゲンで開催されたMicrosoft IT Forumで、同社英国事業本部のシステムエンジニア、Bradley Tippは講演を行ったが、そのなかで同氏は「Microsoftには、オープンソースを敵に回す理由はない。我々は、オープンソースが宗教がかったものだとは見ていないし、また『敵か味方か』といった対立があるとも思わない。むしろ、オープンソースからはたくさんのことを学んできたし、今後も学ぶべきことが多くある」と語った。
Microsoftは、実際にオープンソースのやり方を手本にすることに熱心で、自社のソースコードをパブリックドメイン入りさせることも考えているようだ。そこで、同社の一部の幹部が望んでいるのが、スマートカードのような仕組み。つまり、一部の信頼できるユーザーを選び、彼らがセキュリティの確保された環境で、同社のソースコードにアクセスできるようにする既存の手法を拡張したものだ。
だが、Microsoftは依然として、商業上の理由から、自社の最も貴重な財産ともいえるソースコードを、単純にパブリックドメインに入れるわけにはいかない、との主張を譲っていない。
Microsoftによると、そんなセコいやり方も、実はお互いさまだという。米Red Hatが無償で提供している自社のソフトウェアに関してサポートを中止すると決定したことや、米Novellと独SuSEが合併を発表したことで、フリーソフトウェアのモデルはとどめを刺されたと、同社は信じている。さらに、オープンソースのソフトウェアが、無償で配布されるものから有料のものへと様変わりするのは、Microsoftのビジネスのやり方が正しいことを証明する証であり、またオープンソースムーブメントが生き残るには、そうしたやり方をするしかないとの憶測さえ口にしている。
対立関係にはあるものの、Microsoftはライバルに対する好意を臆せず話すことに熱心で、Microsoftのある社員からは「Linuxが50%のマーケットシェアを獲得することは、Microsoftにとって良いことだ」という話まで飛び出した。この社員は、「少なくともLinuxが普及すれば、これに対応するウイルスも増殖し、我々だけが悪者扱いされることもなくなる」と語る。Tippも「Linuxは素晴らしいと思う」とし、Linuxの普及には同じようなメリットがあると考えている。そして、Linux陣営との競争があるおかげで、Microsoftは油断をせずに済んでいると付け加えた。
ところが、オープンソースのユーザーからは、ソフトウェアに対する称賛がちっとも聞こえてこないとTippはいう。「こっちのほうが優れているからという理由で、オープンソースのソフトの使っているユーザーには、1人も出会ったためしがない」(Tipp)
ユーザーがLinuxに切り替える原因は、ここ数年間のライセンスをめぐる問題やMicrosoftと顧客との関係悪化に対して、顧客がとても大きなフラストレーションを感じていること、あるいは単純にオープンソースにはコストの点でメリットがあるように見えることではないかと、Tippは説明した。
そして、まさにこの「誤解」こそ、Microsoftが最も問題としている事柄であり、コンピュータシステムの所有にかかる全体のコスト(TCO)の面で、フリーソフトがどうなのかという点について、さらに多くの情報を顧客に伝えなければならないと語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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