デジタル時代の新しい現実に適合するために苦闘する音楽業界の姿を象徴するかのように、ソニーミュージック(Sony Music Entertainment:SME)と独Bertelsmann Music Group(BMG)は6日(米国時間)、音楽部門で新たな合弁会社の設立に合意したと発表。これにより、業界2位と5位のレコード会社が1つに統合されることになる。
この発表とほぼ時を同じくして、米EMI Groupが、米Warner Music買収のための資金を確保したというニュースも報道された。仮に双方の話が実現すると、米国内で販売される楽曲の80%近くを僅か3社が支配し、また米国以外の主な音楽市場もこの3社が独占することになる。
音楽業界における合従連衡を促す要因はたくさんあるが、アナリストによれば、容赦ないデジタル化の進行が合併のプロセスを早めているという。
「音楽がなくなることはないが、音楽提供の手段が物理的なものからデジタルなものへと変化し始めた」と、米国の調査会社Gartnerの一部門であるGartnerG2のアナリスト、Michael McGuireは言う。「各レコード会社の親会社は、高いリターンを求める投資家を数多く抱えており、このため経営面で足を引っ張りそうな部分に目を付けている。そして、音楽業界の再編は簡単には進まないだろう」(McGuire)
音楽業界の収益は2000年以来減少を続けており、大手各社はいづれもここ数年間の経営難に陥っている。各社の幹部は、売上減少の大半がデジタルな海賊行為、つまりファイル交換やCDの違法コピーなどによるものだと非難している。
ほかにも、低迷を続けていた経済や、DVDやテレビゲームなどの代替エンタテイメントとの新たな競争を、音楽業界の凋落の要因として挙げるアナリストもいる。
ソニーとBertelsmannは6日に発表した声明のなかで、共同所有のレコード会社Sony BMGを設立するための、法的強制力の無い趣意書への調印を終えたと述べている。新しい合弁会社は、両社が50%ずつ所有するという。
BMGの現最高経営責任者(CEO)Rolf Schmidt-Holtzが新会社の会長に、SMEの現CEOであるAndrew Lackが新会社のCEOにそれぞれ就任する予定で、取締役会には両社から同数の役員が選出される。
新しい合弁企業は、それぞれの親会社の製造、流通または音楽出版事業、つまり過去の業界内の買収の際に、独占禁止法上の問題が特に指摘された分野の事業は行なわないと言う。
この契約は、米国及びEUの司法当局の承認を、これから受けねばならない。
ソニーの所有する音楽レーベルには、 Aerosmith、Tori Amos、Bruce Springsteenなどのアーティストが所属している。いっぽう、BMGには、Norah Jones、Elvis Presley、Beyonce、Lenny Kravitzなどがいる。
ソニーとBMGは、オンラインでの音楽配信に関して、これまで異なった戦略を採ってきた。
ソニーの戦略は、とりわけ不透明なものだ。これは、グループ内の家電、コンピュータ、コンテンツの各ビジネスの利害が、潜在的に衝突するものであるため、これに引き裂かれた結果といえる。そのため、コピー防止CDのような、コンテンツ保護技術を施された音楽や、同様の技術を組み込んだ音楽再生機器を生み出すことになったが、これはどちらも消費者にはあまり受け入れられなかった。
ソニーは、すでに独自のオンライン音楽ストアをつくる計画を発表している。これは米Apple ComputerのiTunesと似たものだが、但し自社のハードウェアと緊密に連携するものになりそうだ。
いっぽうBMGでは、同社幹部の反対を押し切って、親会社のBertelsmannが、旧Napsterのサポートを表明し、しばらくの間だが、同社を支持する唯一のメジャーレーベルとなっていたものの、結局このサポートもNapsterを救うのに充分なものではなかった、という過去がある。現在の両社の幹部はもっと保守的で、iTunesやRealNetworksのRhapsodyといった配信サービスに、自社の音楽をライセンスするという、業界全体の潮流に従っている。ソニー−BMG、およびEMI−Warnerの合併が実現した場合、現在最大手のUniversal Music Group1社が取り残されることになる。但し、同社の親会社である仏Vivendi Universalも、既報の通り、買い手を捜しているところだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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